シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいる者です

些細な事

#119 ぺルテス病と自意識

小さい頃、街で車いすの人を見かけた。私はその人のことをかわいそうだと思った。その人は守られるべき対象で優しく接しないといけない。その人には誰しもが無償の愛情を注がないといけない。私はそういう風に考える、少し変わった、気持ちの悪い子どもだっ…

#118 理想と現実。ある大学生の場合 後編

大学生になったらアルバイトをたくさんするのだと思っていた。 最初に始めたのはイベントスタッフ。初めて入ったのがインテックス大阪でのKANA-BOONのライブだった。『フルドライブ』や『ないものねだり』のような有名な数曲ぐらいしか知らなかった私は、観…

#117 理想と現実。ある大学生の場合 前編

何かをする前に、実現不可能な期待を抱いてしまう人間が一定数います。私の教えるロシア語のクラスにも毎年そのような学生が何人もいます。「ロシア語ができたらあんなことがしたい、こんなことがしたい」と考えるのは勝手ですが、語学は一足飛びに身につく…

#116 何でもない日々(3)

水曜日。久しぶりに大学の食堂でご飯を食べた。ゴビゴビ砂漠とSさんと一緒に食べた。食堂は感染対策のためにブース型自習室のように仕切りが立てられていて、3人で食べているのにまるで1人で食べているような気分にさせる。誰かが5月ぐらいにzoomの授業の中…

#115 何でもない日々(2)

従兄弟の家から帰って、リビングでテレビを見た。女芸人No1決定戦The W。令和になっても「女芸人」という表現が残っているのはどうなのかしらと思うけれど、お笑いの世界では「男」がマジョリティで、それ故に光が当たらない「女」芸人がいるからこそ存在す…

#114 何でもない日々(1)

私の寝起きの悪さは7つの海と5つの大陸の津々浦々にまで轟くほど有名で、もし第三次世界大戦が起こるならそれは私の寝起きの悪さによって引き起こされるでしょう。あるシンクタンクの報告によれば、私の寝起きの良しあしが株価に影響を与えていることはほぼ…

#113 Welcome to melancholic December

猫の声がした。確かにしたのだけれど暗がりの中に目を凝らしても何も見えなかった。もしかしたら誰かを乗せた自転車が軋む音だったのかもしれないし、どこかのフラットで誰かが椅子を引く音だったのかもしれない。でも私が聴いたのは確かに猫の鳴き声で、だ…

#111 気まずい?

気まずい? あなたが踊っていた日はちょうど従妹の誕生日で、だから私はしばらくは忘れない。 あなたはすぐに忘れても私は思い出し続けるでしょう。 あなたが踊っていた時、月は隠れていて、夏なのに涼しかった。 あなたが気まずいなんて思うなんてなんかも…

#110 めちゃくちゃな一週間 中編

ジャンパーをクローゼットから出した。おしゃれな24歳が羽織る上着は「コート」なのだろうけれど、私が着るのは「ジャンパー」である。そう。まごうことなきジャンパー。 ポケットに手を入れると、去年のレシートが出て来た。チョコレートと映画館のレシート…

#109 めちゃくちゃな一週間 前編

ジャンパーをクローゼットから出した。おしゃれな24歳が羽織る上着は「コート」なのだろうけれど、私が着るのはジャンパーである。そう、まごうことなきジャンパー。 ポケットに手を入れると、去年のレシートが出て来た。ガソリンスタンドとミスタードーナツ…

#105 寿司・ドーナツ・ドライブ

九州からゴビゴビ砂漠が帰って来た。一緒に夕食を食べに行った。大学から一番近いところにある回る寿司。彼が留学から帰ってきて以来1年半ちゃんと喋っていなかったから少し緊張していて、久しぶりに会ってどんな話をしようかと思った。 あんまり大きな声で…

#104 大学が始まる

ゴビゴビ砂漠いわく平安時代は今と同じような温暖な気候だったらしい。ゴビゴビ砂漠というのはクラスメイトのあだ名である。 彼の言う通りだとすれば、たとえば菅原道真の祟りだと考えられていた洪水や落雷は、もしかしたら温暖な気候のために起きたことだっ…

#103 くつすてた。

実家に帰った。リンゴを買った。剥いて食べた。 つがるりんご プリモントリオールを捨てた。ナイキの黒い靴。かっこいい靴。靴底に穴が開いて、雨の日には靴下が濡れるようになっていた。洗えない靴らしいから、天日に干していたけれど、くたびれていてもう…

#93 天然な人

さっきまで教授の部屋で数人で話していた。教授と数人の学生で、お茶やクッキーを食べてこれからの進路のことや研究のこと、卒論のことを話していた。帰り道に友達が呟いた。 「天然な人ってちょっと苦手やな。その人の言動のどこまでが『本当』でどこまで…

#92 進級

進級した。ようやくだった。 夜勤だった。日付が替わった。久しぶりに大学のホームページに入った。緊張しながら「成績」のボタンを押すと、また新たなボタンが出て来た。そのボタンには「2019年度通年」と書いてある。私はこれを今からクリックする。そうす…

#89 コーヒーを淹れてみよう

コーヒーを淹れてみよう。そう思った。時間はたっぷりあった。 先が見えない毎日。家にいないといけないのなら、できる範囲で暮らしを豊かにしようと思った。とはいっても野菜は確実に値上がりを続けている。不必要なものは買えないのでとりあえずジャガイモ…

#84 盆のようなもの

◎令和元年 8月18日 おじいちゃんに私の来訪は伝わってなかったらしく、彼は驚いていた。一応お盆で、だから母と3人で過ごす予定だった。そうでもしないとなかなか会えないのであった。ほどなくして母が来た。本来ならば私が前もって祖父に連絡しなければなら…

#83 地元でプール

◎令和元年 8月16日 ともの家を9時過ぎに出た。外はもう暑かった。通りを歩き出したところで、昨日オアシスで買ったチョコとカラムーチョはほとんど食べないまま出てきたことを思い出した。 12時までミスドにいた。何冊も本を持ってきていた。昨日の夜にはア…

#80 正月

正月が来るのがイヤだった。 母と祖父と三人で過ごす年の瀬はつまらないと思った。嫌でも祖母の死を実感してしまう。3人では麻雀ができない。2対2に分かれての百人一首もできない。おばあちゃんの作った田作りも栗きんとんも無い。3人でテレビを見て寝て起き…

#71 血と無神経

その部屋には立派な本棚があって、おおよそ私に縁はないような本が並んでいた。日本史に関わるミステリーや旧日本軍の太平洋戦争の戦記などが乱雑に並べられていた。私はそれらのタイトルに心惹かれることはなく、ざっと眺めただけで部屋を出た。こういう時…

#62 振動

動悸が止まらなかったのがだんだん落ち着いてきた。惰性のままにスマホの画面を延々見ていた。そうしないとずっと考え込んでしまいそうだった。サマープログラムの面接。私は自分の怠惰と幼稚、人間としての未熟さを思い知って家路についていた。たかが面接…

#61 ボールが記憶を

軟球を拾った。野球ボール。Aという文字が書かれているからこれがA球という種類なんだろうと思った。私の小学校は校区内に少年野球のチームが2つもあるようなところで回りの友達も毎日野球をしている環境だった。よく寄せてもらって放課後に野球をして遊ん…

#60 私たちは何者かにならないといけない

2留している。 いや、正しく言うと、実際に留年したのは1年。その前は休学だった。 休学しても別に何もしなかった。旅行をちょろちょろして免許を取っただけだった。 今月、私は23歳になる。 「大学生で22歳」と言うのと、「大学生で23歳」と言うのは違う。 …

#58 時代の切れ目に その1

4月30日 ゆっくり家でおかんとご飯を食べればよかったなと思った。 さっきからずっと山道。おまけにぽつぽつと雨も降っている。国道とは言え道幅の狭い道が続く。もう夜だから黄色い線ははっきりとは見えない。どこまでが道路でどこまでが路肩なのか。ど…

#55 友達のバンド

2月21日(木) ライブに行った。心斎橋パンゲア。去年9月に伊集院香織の弾き語りに行って以来、久しぶりのライブハウスだった。 二日酔いから起きてスマホを見るとバンドマンの友達からラインが来ていた。「今日ライブじゃけえ、前売りのリストのとこに名前…

#54 一日目/『みかんの丘』

4月8日(月) 目が覚めて思ったのは「筋肉痛がひどい」ということだった。ふくらはぎは大したことがないけれど、太ももの前、——大腿四頭筋というのだろうか?——そこがとても痛い。昨日はフットサルをした。新大阪まで行って先輩と会い、知らない人に交じって…

#49 おれの春巻き!!

大須にじいろ映画祭に参加していた。今日は朝10時から夜8時過ぎまでたくさん映画を観ていた。会場は名古屋の大須演芸場。名古屋市営地下鉄鶴舞線(水色のライン)の大須観音駅から歩いて10分ぐらい。いや10分もかからんか、5分くらい。 大きいスクリーンと大…

#48 あの頃

11月の最初の日、Kちゃんと映画館に行った。TOHOシネマズ梅田。映画をわざわざ梅田で観るなんて久しぶりだ。春休みに友人の若林君と観に行って以来である。その時は「シェイプオブウォーター」と「グレーテストショーマン」を観た。「シェイプオブウォーター…

#46 障害について思うこと

目下のところEさんの頭の中には肉のことだけ。リビングで食事をする他の人のお皿から肉片をかっさらおうと機会をうかがっているのだ。「もうご飯も食べてココアも飲んだでしょう? お風呂にも入ったんだからお部屋でゆっくりしてください」と言って制止する…

#44 「せつない」のありか

『せつない話』という本を読んだ。私の好きな作家、山田詠美が集めた「せつない」短編たちを光文社が1993年に出版したものだ。国内外の作家が書いた14の短編たち。私はそれを先々週の金曜日に天神橋筋商店街で買ってついこないだ読みおわった。吉行淳之介の…