シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいました。関西、箱根を経て、今は北ドイツで働いています。B2レベルのドイツ語に達するのが目標です

#189 オーストラリアに行く日

 まだオーストラリアに行ったことがない。私の初めての海外旅行はモンゴルだった。日本人としては珍しいと思う。
 オーストラリアが初の海外渡航になる可能性もあった。中学校の英語研修がオーストラリアだったのだ。希望者が研修内容をプレゼンし、プレゼンが良かった人が選ばれてオーストラリアに10日間いけるというシステムだったと思う。私は行きたい気持ちもあったけれど、40万円という金額にビビり、結局行かなかった。今でも行けばよかったと思う。旅行会社が絡んでなくて、お金がもっと安ければ絶対に行っていた。でも行かなかった。勇気がなかった。
 

箱根の秋。
 14時に大きな荷物を持った5人組の外国人がHAKONE TENT(私の働くゲストハウス)に来た。一棟貸しになっている離れを利用するグループ。チェックインの1時間前だけど、部屋の用意はもうできているので入ってもらった。カップルが2組と、その友達の女性。彼女は自分のことをふざけて「Third wheel」あるいは「Fifth wheel」と言っていた。親密な関係の2人にくっついていく羽目になりお邪魔虫となる人のことを英語でそういうらしい。勉強になった。
 彼ら5人は基本的にシドニーの大学時代に出会った友達らしかった。友達の友達だったり、カップルだったり、高校時代の友人だったり。複雑だけど、一緒に5人で日本を3週間旅行するぐらいだから、皆仲良しで、オープンな性格なのだろう。5人全員の共通の友人がもう1人いるらしいけれど、今はカナダにいるらしい。その人の話も興味深かった。
 次にチェックインしたのもオーストラリア人だった。2人で予約していたのに男性1人だけだった。彼はライリーと名乗り、自分の彼女は今日は来ないということを言った。なんでも彼女のパスポートに「ウォーターダメージ」があってオーストラリアから出国できなかったらしい。パスポートを新しくして、彼女は5日遅れで日本にやって来るらしい。建築を学ぶライリーは東京を一人で観光し、都内の有名な建築を見て回ったらしい。そんな彼はメルボルン出身なのだけど、初め「メルボルン」の発音が聞き取れなくて、何回も訊き返した。私の耳には「ルボン」や「ルーベン」としか聞こえないのだけど「メルボルン」らしい。正直に言うと、最後まで納得できなかったのだけど、グーグルマップで見せてくれたのは絶対に「Melbourne 」で、全豪テニスが行われる都市だと言っていたから間違いない。オーストラリアの訛りなのか、それとも彼の言い方なのか。検証が求められる。
 

強羅にあるパプ「PUB STOP」ブルワリーの隣にあるので美味しいビールが飲めます

 16時にシフトが終わった。部屋で少し寝て、18時半から外出した。近くのパブにサッカーの試合を見に行った。そこには離れに泊まっている5人組がいて、ガハガハと騒いでいた。大画面にサッカー中継が流れていて、W杯のコスタリカ戦がやっていた。でも別に誰も真剣にサッカーを見ている感じではなくて、ビールを飲みながらあれこれ議論しあっている感じだった。結構熱く話していて、こういうのは日本語ではあまりできないことだよなあと思った。私の世代の文化では日本語で「議論」することというのがほとんどない。昔はもっと議論しやすい文化があったのだと思うけれど、90年代生まれの私にとって、日本語で議論することは結構難しい。「熱い」ことを冷笑する文化が、中学校の時点ですでに教室の中にあった。残念なことだ。

写真美術館のカフェ。パブからの帰り、カフェの前の坂道で「Melbourne」の発音を教えてもらった。
 5人と話す。名前は、アレックス、エリッサ、ブレイディ、サラ、サマラ。自分のことを「お邪魔虫」とふざけて呼んだのがサマラで、彼女は「Kiwi」つまりニュージーランド出身だった。大学進学のタイミングでオーストラリアに渡ったらしいけれど、そういうことってよくあるのだろうか。芸術系のエリッサ以外はみんな理系で、生物学や、ケミカルバイオロジー、ブログラミング、化学を勉強してた。アレックスはひらがなをマスターしていて、簡単な日本語で会話できたし、エリッサも小学校時代に少しだけ日本語を勉強したと言っていた。ブレイディとアレックスがグーグル翻訳で英語のスラングをニヤニヤしながら教えてくれた。ロシア語もそうだけど、英語は日本語と違って悪態の数が多くて羨ましい。中継の中で日本の選手が倒された時や、コスタリカが点を決めた時に、私がブツブツ言うと、「こういう時はこの言葉を使うんだよ。××××!」と悪態を教えてくれた。多分一生使わない。それなりに日本語ができるアレックスがブレイディと一緒にGoogle翻訳を使って色々日本語の「悪い」表現を調べていた。
 途中でライリーが来て一緒にサッカーを見た。みんなそれなりにサッカーについて気になっているようだったけれど、ワイワイ騒いでいるうちに試合は終わった。日本代表は引いて守るコスタリカを攻めあぐね、負けた。

PUB STOP。別のアングルから。奥の壁にビールのサーバーがあります
 みんなに色々質問をされた。「日本ではサッカーが一番人気のあるスポーツなの?」「うーん。野球とサッカーが同じぐらい人気があるかな」「バレーはどう?」「バレーも人気だよ。学校では人気だし。女子バレーの日本代表は結構強いよ」そんなことを話した。バレーボールについて訊いてきたのはもしかしたら『ハイキュー』が外国でも人気だからかもなと思った。外国語学部でもゲストハウスでも、日本のアニメや漫画について話したがる人は結構いる。この前来たマルセイユからの3人組も日本の漫画がぎっしり詰まっている本棚を見せてくれた。お土産に日本語版のワンピースの最新巻を買ったらしい。11月にリヨンから一人で来た女の人とも結構漫画の話をした。最近私は友達に勧められて『蟲師』を読んだのだけど彼女は『蟲師』も知っていてびっくりした。オダギリジョー主演で映画化されたとはいえ、そんなに有名な漫画じゃないと思うから。おすすめの漫画を訊かれたので、とりあえず私の好きな『この世界の片隅に』を教えてあげた。

チェックインの時間が始まる前に掃除をしてベッドメイキング
 サッカーを観ながらラグビーの話もした。親友がラグビーをやっていたので、日本のリーグワンにオーストラリアの選手がいるのも知っているし、最近電話したら新しいラグビーリーグの話も彼から聞いた。でも上っ面の知識しかないから、限界があるし、別にオーストラリア人が皆ラグビー大好きというわけではない。日本人の私がアニメを好きでないように。

ゲストハウスの玄関。日が直接差す午前中の短い時間だけガラス戸がこんな風に美しくなる。
 バーから帰って一緒にカードゲームをした。「SET」という名前のゲーム。場にカードが並べられて、同じ組み合わせを見つける遊びなのだけど、それが結構難しいのだった。ワイワイやっているうちに時間はすぐに過ぎた。英語の表現とか教えてもらって、代わりに日本語の便利な表現とか、おすすめの観光地を話したりした。彼らは京都と大阪に行き、高山に行くらしい。飛騨高山で合掌造りを見る人は結構多い。いいなあ高山。自分はまだ行ったことがない。
 
 さんざん騒いでいた彼らだけどチェックアウトの時はとても部屋をきれいにして帰ってくれた。そして靴下を洗濯機の中に忘れて帰った。交換したインスタグラムで連絡したら「捨てていいよー」と返事が来た。
 これから2週間日本を楽しんでほしいなあ。SNSの彼らの投稿を見るのが楽しみだ。いつかオーストラリアに行ったら彼らに会えるかなあ。

 

〈おまけ:その日覚えた英語〉
servo:オーストラリア英語におけるガソリンスタンド。service stationの短縮形だと思われる。
be dying to do〜: (死ぬほど〜したくて仕方がない)
cheeks will fall off: (美味しくて)ほっぺたが落ちそう!
banter: 冗談
mockery: 嘲けり、愚弄
Birdsville: オーストラリア、クイーンズランド州のまち。ラクダで有名らしい。ちなみにオーストラリアのラクダはフタコブラクダ
 
 
【今日の音楽】

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