シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいます

フィクション

#106 1ステップ2ステップ

※この話はフィクションです。 ※暗い話が苦手な人や落ち込みやすい人は、調子が良い時に読んでみてください。 大人になんかなりたくないわあ、と言った私に、あんたももう大人なんやでとお母さんは言う。大人って何、みたいな会話は結局いつも哲学みたいなく…

#98 情けない話

いつから死にたいと思うようになったのだろう。4歳? 5歳? 始まりはかなり早かった。父と母が言い争っているのを聴きながら、自分がいなければこんな言い合いも起こらないのだろうと思っていた。自分が悪いと責めていた。悲しかった。非力な自分が許せなく…

#96 2017年。春から夏。

祖母が息を引き取った時、私は祖母の前に座っていた。2日前から祖母は何も言わなくなっていた。何も言わなくなったその時に私の中でおばあちゃんは死んだ。だから息をしていないから、心臓が動いていないからといって、家族が今泣いているのは少し変だなと思…

#95 鍵っ子だった

鍵っ子だった。 尼崎の駅前のマンションに住んでいた。道路が拡張されたせいで今はもう残っていないけれど、マンションの前には広い花壇があって、春になると一面にチューリップが咲いた。毎年毎年チューリップの横で従兄弟達と写真を撮った。伯母がカメラに…

#85 海野君のこと

今とてもしんどい。 理由はたくさんある。まず第一に睡眠の問題。昨日は友達と朝まで遊んだ。フットボールとアルコール。ラーメンとカラオケ。 第二に食事。春休みだからのらりくらり一日一食。時間も栄養素も偏っている。でんぷんばかり摂っている。 第三…

#71 血と無神経

その部屋には立派な本棚があって、おおよそ私に縁はないような本が並んでいた。日本史に関わるミステリーや旧日本軍の太平洋戦争の戦記などが乱雑に並べられていた。私はそれらのタイトルに心惹かれることはなく、ざっと眺めただけで部屋を出た。こういう時…

#70 非日常発日常行

令和元年9月19日 夜行バスが八重洲口を出たのが9時50分。電灯が消えたのが22時13分。三列目の通路側に座りながら終わりつつあるこの旅行について考えていた。東京で再会した友人のこと、ソウルで食べた焼肉、釜山の博物館、慶州のお寺と古墳、全州のバス停で…

#60 私たちは何者かにならないといけない

2留している。 いや、正しく言うと、実際に留年したのは1年。その前は休学だった。 休学しても別に何もしなかった。旅行をちょろちょろして免許を取っただけだった。 今月、私は23歳になる。 「大学生で22歳」と言うのと、「大学生で23歳」と言うのは違う。 …

#59 ある出来事

※この話はフィクションです。血の描写があるので、苦手な人は読まない方がいいと思います。 11時を回ったところだった。 通称ラーメン横丁と呼ばれる通りを抜けて男は駅へと急ぐ。明日は土曜日。仕事がないとはいえ午前中は出社しなければならない。再来週に…

#51 ハテナを投げろ!

そして迎えた新年。うちは家族で集まるとすぐ坊主めくりをするのだけど、正月一日の午後になって「ボウリングに行きたい」なんて弟が言いだして。「ああめんどくさいこと言うなよ」と思った私が口を開ける前に父が「ストライク! いい考えや!」なんて叫んで…

#41 不確実性の時代におけるデートについて

もしあなたが優しい人だと思われたいのであれば、集合場所はビッグイシューの販売員がいる駅にするべきだ。相手が来た時を見計らってビッグイシューの最新号を手に取りきっかり350円を渡すのだ。お釣りをないようにするのが親切と言える。改札を出たばかりの…