シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいました。関西、箱根を経て、今は北ドイツで働いています。B2レベルのドイツ語に達するのが目標です

ことば

#226 ぷにぷにが失われた

" data-en-clipboard="true">ぷにぷにが失われた。35分の命だった。 ぷにぷにが失われた。石橋くんの乱暴な左手によって。 ぷにぷにが失われた。その引き換えに右手の自由を得る。 ぷにぷにが失われた。後にも先にもそれだけだった。 ぷにぷにが失われた。そ…

#222 雲ばっかり。雨も

時々、ジブリの『おもひでぽろぽろ』が観たくなる。高畑勲の映画。山形が舞台だったと思う。東京でOLをしていた主人公が山形に帰る一夏。主人公の子供時代と現在が行ったり来たりするストーリーが好きだった。時々、現在パートに子供時代の主人公がチラリと…

#219 いつかどこかで。神様みたいな人と神様みたいになって

バス停に落ちていたイチゴ 今、物事は全て鮮やかで情報量が多くて、だからちょっと辛い。いつも辛いわけじゃなくて、波があって時々辛い時期が来る。SNSを開く回数を減らしてるし、友達の書いている文章も読みたいのだけど心が崩れるのが怖くて見れてない。…

#214 Taiwo と Kehinde の話。ヨルバの双子は、生まれた時から名前が決まっているらしい

植物マーケットの前の金曜日。語学学校は午前と午後にも授業があった。午前は代理の先生が来て授業をやった。その先生は祖父母がリトアニア人で、戦争後にカリーニングラード(ドイツ語はケーニヒスベルク)がソ連領になったためにハンブルクに越してきたら…

#213 ナイジェリアには四季がないし、ここでは誰もスピッツの「ロビンソン」を歌わない。

ナイジェリアには四季がない。乾季と雨季しかないとはいえ草木も自然も変わるから、それを単に「四季がない」と言ってしまうのはどうかと思うけれど、でも「四季」という言葉がすでに市民権を得てしまっているから仕方がない。虹の見え方が文化によって違う…

#212 図書館に行ってみよう

地図を見ていたら本のマークがあった。Bücherhalle って書いてあったからきっと図書館だと思う。Bücher が本の複数形。単数はBuch。Halle がホール。ドイツ語の名詞には性がある。Buch は中性名詞だけど Halle が女性名詞なので Bücherhalle も女性名詞とな…

#150 音楽について言葉にできないのが悔しい

多くの天才が、初めは誰にも理解されないのと同じように、プロコフィエフの音楽とショスタコービチの音楽も、最初は奇妙で難解だと思われていたらしい。2人とも20世紀の前半に活躍したロシアの作曲家だ。私は素人なので、別に当時だけでなく、今聴いても奇妙…

#145 そこにいたこと

※読む人によってはつらい箇所もあるかもしれません。予めご了承ください。 日記によると私が荒浜と石巻を訪ねたのは2018年の1月19日と20日らしい。津波の被害を受けた沿岸部は災害危険区域となり、かさ上げ工事がされていた。吸い込む空気の中に砂ぼこりを感…

#128【書籍紹介】『あわいゆくころ 陸前高田、震災後を生きる』瀬尾夏美(2019)晶文社

ある村がダムの底に沈むことになった。村人たちは満ちていく水を見ながら過ぎた日々のことを思い、語らい合った。ある村人は都会に出た。またある家族は親類の伝手を頼って、近くの村に移り住んだ。一人のおじいさんがいた。おじいさんは思い出のたくさんあ…

#93 天然な人

さっきまで教授の部屋で数人で話していた。教授と数人の学生で、お茶やクッキーを食べてこれからの進路のことや研究のこと、卒論のことを話していた。帰り道に友達が呟いた。 「天然な人ってちょっと苦手やな。その人の言動のどこまでが『本当』でどこまで…

#90 詩を書こう

『詩を書こう』 こういう時だから文章を書こう そう思った それなのに言葉はあとからあとから溢れて 掬えど掬えど「本当」は掴めないまま 誰かと電話した 思いつくままこぼれ出る言葉たち 強いことば弱いことば 抱きしめたいのに目を合わせたいのに 目の前に…

#89 コーヒーを淹れてみよう

コーヒーを淹れてみよう。そう思った。時間はたっぷりあった。 先が見えない毎日。家にいないといけないのなら、できる範囲で暮らしを豊かにしようと思った。とはいっても野菜は確実に値上がりを続けている。不必要なものは買えないのでとりあえずジャガイモ…

#80 正月

正月が来るのがイヤだった。 母と祖父と三人で過ごす年の瀬はつまらないと思った。嫌でも祖母の死を実感してしまう。3人では麻雀ができない。2対2に分かれての百人一首もできない。おばあちゃんの作った田作りも栗きんとんも無い。3人でテレビを見て寝て起き…

#79 意味のないこと意味のあること

「どうしてお前は意味のないことを心配するんだ?」 高校の時に友達に言われた言葉。部活の試合の帰りでみんな疲れた顔でバスに乗っていた。ちょうど女の人が降りたあとだった。その女の人というのが問題で、彼女の腕には無数の切り傷があったのだ。どうもリ…

#44 「せつない」のありか

『せつない話』という本を読んだ。私の好きな作家、山田詠美が集めた「せつない」短編たちを光文社が1993年に出版したものだ。国内外の作家が書いた14の短編たち。私はそれを先々週の金曜日に天神橋筋商店街で買ってついこないだ読みおわった。吉行淳之介の…

#33 そのことば「取り扱い注意!」

使う時に気をつけないといけない言葉がある。 今年の2月17日と18日の土日に名古屋の大須に行った。「大須にじいろ映画祭」というのに参加したのだ。「にじいろ」という名の通り、セクシャルマイノリティに関する映画祭だった。 18日にメインの上映会があって…

#32 プレゼンターツィア  

今日はロシア語でプレゼンをする授業だった。4月から各々で進めてきた研究を発表するのだ。90分の授業で6人が発表した。 私は今月に入ってから論文を調べ、何冊かの本を読み、原稿を仕上げた。パワーポイントもどうにかこうにか仕上げた。しんどかった。 そ…

#10言葉の限界 その2

(#9のつづき) 「星の王子さま」を読んで半年たった後、私は軽いうつ状態になった。周囲にあふれるとげのある言葉が辛くて家に引きこもっていた。クラスメイトの、物事を言い切るような言い方が許せなかった。私の席の後ろで繰り広げられる悪口の連鎖に傷…

#9言葉の限界 その1

「関西クィア映画祭」というのがある。セクシャルマイノリティに関する映画を上映する映画祭で、「みんなヘンでいいじゃないか」というスタンスでやっているみたいだ。私は行かなかったが、去年の秋にも、11回目の映画祭が大阪と京都で行われた。今年もある…