シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいました。関西、箱根を経て、今は北ドイツで働いています。B2レベルのドイツ語に達するのが目標です

本、文学

#223 引きこもり。

久しぶりに引きこもっていた。この2日間の自分は本当によくないなあと思って、でもアウトプットの時間も取らないといけないのだろうと思ってこの文章を書く。長くなりそうだと思う。 せっかくこの世に生を受けたのに。せっかくドイツに来て、毎日新しいこと…

#191 みたいな。朝吹真理子『きことわ』を読みながら

例えば真実。 例えば、世界の全てを説明するような秘密。その隠された真実を、隠された秘密を、人間はどのようにして見つけ出せば良いのだろう。 真実が雨と共に空から降るとしたら。水とともに川を流れ、真実はやがて海へと行き着く。太陽に照らされた海か…

#187 友達のジャズを聴く

で、今の私は吉祥寺のジャズバーStringsでカプリチョーザを食べている。正しい場所の名前はLive Bar & Italian Restaurant Stringsというらしい。イギリスじゃなくてグレートブリテン及び北部アイルランド連合王国。ハクじゃなくてニギハヤミコハクヌシ。パ…

#182 引き算の人間関係について。角田光代『対岸の彼女』を読みながら

" data-en-clipboard="true"> 結局人間は分かり合えないのだと思う。そして最後は傷つけ合って終わるのだと思う。楽しいのは最初だけ。大学に入ったあの頃。可能性の青い扉が開けて、誰とでも友達になれそうだったあの数週間。あるいは高校、中学、小学校。 …

#181 緊張とお風呂と本

あと数時間で誕生日を迎えるというのに私は浴槽に浸かりながら芥川について考えている。箱根の旅館。働いているスタッフはお客様と時間をずらした深夜帯に入浴できることになっている。私はお風呂が好き。でもここでは、一度建物を出て、大浴場のある姉妹館…

#179 定点観察伊坂幸太郎(2)『魔王』

このコーナーは、伊坂幸太郎を2021年から読み始めた私が、伊坂幸太郎の作品を読み進めるごとに備忘録を残していくという企画です。あまり下調べなどはせず、感じたことをそのまま書こうと思います。 第2回は『魔王』です。講談社文庫から出ているものです。

#178 定点観察伊坂幸太郎(1)『PK』

このコーナーは、伊坂幸太郎を2021年から読み始めた私が、伊坂幸太郎の作品を読み進めるごとに備忘録を残していくという企画です。あまり下調べなどはせず、感じたことをそのまま書こうと思います。 記念すべき第1回は『PK』です。講談社文庫から出ているも…

#154 萩から下関、北九州へ

◎令和元年 8月30日 そんなに眠れていないはずなのに朝7時半に目が覚めた。昨日は二段ベッドの中でラジオを聴きながら眠りについた。岡村隆史のオールナイトニッポンに劇団ひとりがゲストで来ていた。劇団ひとりがビートたけしのモノマネをやるコーナーがあ…

#152 萩、2日目

◎令和元年 8月29日 眠い。すごく眠い。二度寝した。起きて9時。また寝て11時。「まずいチェックアウトしないと!」そう思い当たりガバッと起きる。そこにオーナーさんがやってくる。 「今日は無理やねー。通行止めで下関までは行けんね。もう1泊していき」 …

#146 永遠の入り口

誰かと仲良くなる。「○○が好きなの?」「一緒だね」「似てるね!」そういうやりとりが繰り返されて、束の間私はうっとりしてしまう。共通点がたくさん。育った町や行った場所。好きなバンド、スポーツチーム、アイドル。出会った日はうっとりしながら帰る。…

#128【書籍紹介】『あわいゆくころ 陸前高田、震災後を生きる』瀬尾夏美(2019)晶文社

ある村がダムの底に沈むことになった。村人たちは満ちていく水を見ながら過ぎた日々のことを思い、語らい合った。ある村人は都会に出た。またある家族は親類の伝手を頼って、近くの村に移り住んだ。一人のおじいさんがいた。おじいさんは思い出のたくさんあ…

#122 部屋の整理(2)

子供向けの国旗の本。保育所に通っていた時、国旗の本をおばあちゃんに買ってもらった。たしかクリスマスプレゼントだったと思う。朝起きたら枕元に一目見ただけで中身が本だとわかる包みがあって、開けると色とりどりの国旗の絵が入った表紙が目に入った。…

#83 地元でプール

◎令和元年 8月16日 ともの家を9時過ぎに出た。外はもう暑かった。通りを歩き出したところで、昨日オアシスで買ったチョコとカラムーチョはほとんど食べないまま出てきたことを思い出した。 12時までミスドにいた。何冊も本を持ってきていた。昨日の夜にはア…

#82 言葉とか場所とか(1)『私小説 from left to right』

「アメリカに生まれていたら楽しかっただろうな」 かつて私の友人がそんなことを言った。私は同意した。私は中学生だった。毎日がどうしようもなくつまらなかった。引っ越し先の街にも学校にもなじめなかった私は親に命じられるままに中学受験をしたのだけれ…

#81 文章の中に彼らがいてくれるおかげで。——『上海ベイビー』の天天と『ライ麦』のホールデン

『上海ベイビー』を読んだ。衛慧(weihui)という人が女性が1999年に発表した小説である。現代は『上海宝貝』らしい。「宝貝」と中国語の辞書で引いたらどういう意味なのだろう。まさか「ベイビー」と出るわけではないと思うけど。気になる。 主人公はココと…

#78 はるかに遠い——『停電の夜に』を読んで

2018年の夏のある日、シリア出身だという人に初めて会った。彼は広島大学の大学院で建築を勉強していると言った。F市で行われたインターンシップに私たちは参加していた。インターンとは言ってもほとんど観光のようなものだった。F市にある工場や会社を巡っ…

#72 直方市石炭記念館

◎令和元年 8月31日午後 この感じ、宮沢賢治の童話に似てるな。そう思った瞬間が人生に一度あった。中学に入った5月、オリエンテーション旅行という名の、学年の親睦を深めるような旅行があった。あんまり覚えてないけれど兵庫県の神鍋高原に行って1泊か2泊す…

#54 一日目/『みかんの丘』

4月8日(月) 目が覚めて思ったのは「筋肉痛がひどい」ということだった。ふくらはぎは大したことがないけれど、太ももの前、——大腿四頭筋というのだろうか?——そこがとても痛い。昨日はフットサルをした。新大阪まで行って先輩と会い、知らない人に交じって…

#47 芥川龍之介がわからない。(前編)

最近読んだ本。 『蜘蛛の糸・杜子春』新潮文庫 『芥川龍之介の「羅生門」「河童」ほか6編』角川ソフィア文庫 『羅生門・鼻』新潮文庫 『地獄変・偸盗』新潮文庫 貸してもらったままの本の中に4冊も芥川があったので、先月末にようやく読み始めた。本棚にもう…

#45 死人にくちなし

11月14日の夜勤。前々から読みたいと思っていた本を読み切った。読むと夢中で、ほとんど一晩で読んだ。 高野悦子『ニ十歳の原点』。おばあちゃんからもらった本。亡くなる数か月前のある日、おばあちゃんは本棚の中身を捨てる本と捨てない本に分けていた。ご…

#44 「せつない」のありか

『せつない話』という本を読んだ。私の好きな作家、山田詠美が集めた「せつない」短編たちを光文社が1993年に出版したものだ。国内外の作家が書いた14の短編たち。私はそれを先々週の金曜日に天神橋筋商店街で買ってついこないだ読みおわった。吉行淳之介の…

#39 新年。映画と小説と音楽と

2019年の新年を赤の広場で迎えた、と自慢したくて街に繰り出したのだけど赤の広場には入場規制で入れなかった。警察が柵を作った前で動けなくなって、そのまま一時間待って、別にカウントダウンをみんなでするわけでもなかった。ただスマホが新年が来たこと…

#37 青春ごっこ

全部青春ごっこなのよ。彼女はそう言った。小雨が降る夜で時刻は午後8時を数分過ぎていた。とうに閉まったお城の門には屋根があって、私達はそこで雨宿りをしながらお酒を飲んでいた。 漫画でもドラマでも映画でも、ありもしない「青春」を描いて売っている…

#21 ワインズバーグ発ミスド行き

今日はなんとか学校に行けた。でも明日の教科のテスト勉強はどうも終わりそうになくて、昨日から困っている。 単位を落とすわけにもいかないから、ダメもとでいいから勉強をしようと思っていた。早く終わらないかなーと思いながら2限を受けて、まったく授業…

#13 紅鮭漂流記

長い間母親と二人で暮らしていた。私が思うに母の悪いところは二つある。 一つ目は時々現れる突拍子もない一言である。一度、家族全員としゃべっているテーブルで「あげまん」という単語を発したことがあった。びっくりした。みんな唖然としていて、私だけが…

#9言葉の限界 その1

「関西クィア映画祭」というのがある。セクシャルマイノリティに関する映画を上映する映画祭で、「みんなヘンでいいじゃないか」というスタンスでやっているみたいだ。私は行かなかったが、去年の秋にも、11回目の映画祭が大阪と京都で行われた。今年もある…

#2放浪記とブログ

(#1のつづき) 浪人時代も終盤に差し掛かる。夏が終ると瞬く間に秋がすぎた。冬にはいると冬期講習が始まった。冬期講習は授業が毎日あるわけでないので、僕は家に引きこもりがちになった。そうすると早寝早起きのリズムが崩れて勉強時間がすくなくなり…

#1林芙美子との出会い

#1林芙美子との出会い 林芙美子に出会ったのは浪人時代である。 夏休みどうしても寝れなくて毎晩毎晩ラジオを聴きながら勉強をしていた。勉強をしているといってもそれはもちろん形だけで、結局はぼーっとしたり、あごのところにちょろちょろと顔を出し始…