シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいました。関西、箱根を経て、今は北ドイツで働いています。B2レベルのドイツ語に達するのが目標です

#148 ヘアドネーションをしました

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 伸ばし続けていた髪を切った。

 ちゃんとした美容室に行くのは1年ぶり。去年の10月に髪の毛を染めて以来だ。2019年からずっとツーブロックにしている。頭頂部だけ残して、左右と後ろは刈り上げ。この髪型にして2年半。長かった。

 

 美容室に行く時というのは、どうしてあんなに緊張するのだろう。かっこよくなりたい、外見を良くしたいという人が行く場所なのだから、自分のような磨いても光らないような人間には敷居が高いというか、意味がないような気がする。あるいは、人間大事なのは中身であって外見ではないのだから、そんな見せかけを変えたところで無意味なのではないかとも思ってしまう。そんな風に思うけれど、美容師さんのおかげでいい感じになった後は、自分の気分が上がることも知っている。私は大学2年生を3回やったのだけれど、進級できた年は、時々美容院に通っていた。自分の髪型が「変じゃない」という自信を持てていなかったら、もしかすると大学にも行けず、未だに2年生をしていたかもしれない。

 

 もしかして、と時々思う。

 私は外見と内面を別々のものとして考えていたいと思っているけれど、私の外面の自信と内側の自信は、かなり強く繋がっているのではないだろうか。そうとすれば色々と思うことはある。例えば、私にもしアトピー性皮膚炎がなくて、身長もあと10センチほど高かった場合、もう少し自信を持って日常をムーブ出来ていたのではないだろうか。そうだとすると————そうだとすると私がやるべきことは一つである。急いで荷物をまとめて温泉地でのリゾートバイトに行くのだ。出来れば肌に効能があるアルカリ性鉱泉だとよい。旅館で魚をさばき、モップ掛けをし、皿洗いをした後で、一日の疲れを温泉で癒す。アトピー性皮膚炎とは長い付き合いだけど、リゾートバイトをしながら毎日毎日浸かればだいぶ良くなるだろう。旅館の女将さんや他のみんなに惜しまれてリゾートバイトを去る頃にはたんまり小金持ちになっているわけで、そのお金をもってしてソウルのどこかの美容整形外科に行くのだ。そこで身長を伸ばす手術をしてもらって身長が165センチぐらいになれば、ちょっとは自信がつくかもしれない。

 リゾートバイト程度の貯金では、手術費用に到底足りないし、骨を切って伸ばす手術は絶対痛いに違いないけれど、まあ妄想なのでそういう面倒なことは考えないでおこう。

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 ヘアドネーションを目指して髪を伸ばすのは、実は2回目である。2017年から2018年にかけても、寄付するために髪を伸ばしていたのだけれど途中で断念してしまった。自分自身の内面が抱える、悩みやモヤモヤを、長い髪が如実に表している気がして切ってしまった。その時は、髪を切ったらさっぱりして心も晴れやかになったけれど、ヘアドネーションできる31センチを目指していたので挫折も感じたのだった。

 2020年は外に出る時間も少なくて、だから髪の毛を毎月切る必要も特に感じなかった。それよりも、果たして外に出ていいものか悩む場面が多くて、だから初めのうちは自分でバリカンを持って側頭部を剃っていたし、慣れると後ろ側も自分で剃った。ヘアゴムでまとめるだけのシンプルな髪型なので外に出る時に迷わなくていいし、いちいち考えなくていいので楽だった。「その髪はなんなの?」なんて眉をひそめる人もいたかもしれないけれど、世界的に疫病が大流行している2020年には生きているだけでいいやと思っていた。大学であからさまに私の髪を笑う男の子のグループもいることにはいたけれど、慣れると気にならなくなった。悲しくはあったけど。

 

 ヘアドネーションというのは病気や事故など様々な理由でウィッグを必要とする子供たちのために、ウィッグを無償で作成・提供する運動らしい。調べると色々な団体が出てくる。参考にしたブログで紹介されていたJapan Hair Donation&Charity JHDC/ジャーダック)というNPO法人に髪を送ることにした。

 ヘアドネーション、手順通りにすれば、自分で髪を切って包装して送ることもできるみたいだけど、ジャーダックや他のNPOHPにある「賛同サロンを探す」というページから、行きやすい美容院を探して予約する方法が一番簡単だと思う。ヘアドネーション用のカットは色々ルールがあって少しややこしい。慎重を期すなら、ヘアドネーションに慣れている賛同サロンを使う方が良さそうである。

 「賛同サロンを探す」のページで調べると、自転車で10分ほどのところに賛同サロンがあった。電話をかけてヘアドネーションをしたい旨を話して、予約をした。カットは2900円。QBハウスの1200円と比べると高く感じるけれど、今回ばかりはどうしょうもない。カット後のヘアスタイルも相談したいし。

 毎回思うけれど美容院の名前って、どうしてああも様々なのだろう。ヘアーサロンとか美容院、理容院なら分かりやすいけれど、「テラス」とか「グランドサロン」とか言われるとよくわからなくなる。男性である自分が行って大丈夫な雰囲気なのか、というのも気になる。別に性別に関係なくどこでも行けるべきだし、そういうのを気にしないような肝っ玉の太さが欲しいけれど、でも気にしてしまう。今回も電話をかける前に、クチコミを読んでどういう人が利用しているのかを調べた。

 

 髪の毛を伸ばして気づいたことはけっこう多い。例えば長い髪でリュックサックを背負うと、肩ひもと体の間に髪の毛が挟まることがあって、とても痛い。女の子の方がハンドバッグやトートバッグを持っている率が高い理由がよくわかった。リュックの紐をあんなに伸ばしている人が多いわけも。それから、髪の毛を結ぶために買ったヘアゴムたちは、安いものから順にボロボロになっていく。全部調べたわけじゃないけど100均のはあまりよくないと思う。それから、つけるトリートメントで髪を梳く時のは気分があがる。大学やバイト先にいる日中、自分の髪からいい匂いがするとなんだか心強い。頑張れるような気がする。旅行先で使ったことのないコンディショナーがあると試してみたくなる。そういうあれこれは、精神的な余裕や心の豊かさにやんわりと繋がっているのだと思う。長い間、髪の毛のケアやネイル、化粧といったものを、どこか「本質的でないもの」として軽んじていたけれど、それは間違いだった。大事な人にとってはとても大事なのだ。軽々しく馬鹿にしていいものではなかった。

 

 担当して頂いた美容師さんは男の人で、おしゃれなニューエラのニット帽を被っていた。かっこいい人だった。ネックレスやきれいな眉毛の形もそうなのだけど、それだけじゃなくて、美容師としてしっかり私のヘアスタイルを考えてくれる姿勢がかっこいいと思った。久しぶりの美容院に緊張していたけれど、段々自然に振舞えるようになったのは美容師さんのおかげだった。

 

 最初にヘアドネーションについての髪を書いて、それから髪を束ねて切ってもらう。2年半も伸ばした髪の毛だけど、束にすると4つにしかならなかった。とにかくヘアドネーションすることしか頭になくて、カット後のヘアスタイルを全く考えていなかったのだけど、美容師さんは自分のために髪型を色々と提案してくれた。ドネーション分の31センチを切れば、ほとんど坊主頭になるかと予想していたけれど、案外髪の毛は残った。結局アーセナルの左サイドバック、キーラン・ティアニーのような髪型になった。美容師さん曰くジェットモヒカンという髪型らしい。髪型は業界用語のようで覚えられない。美容院では、髪型を区別するために、たくさんの髪型に名前がついているけれど、興味がないらしい私の脳みそには、ツーブロックとかアシメトリとか、そういう一般的なもの以外を受け付けいれるスペースがないようだ。美容師さんがよく「○○なんてどうです?」なんて勧めてくれるけれど、私はいつも「○○ってどんな髪型ですか?」と聞き返さないといけなくて何だか間が悪い気がする。もちろん、わからないことは質問するべきだし、正しいコミュニケーションとはそういうものなのだけど、面倒くさく感じてしまう。よくないなあとは思うけれどこれは当分続きそうだ。

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 ヘアドネーションするというのを決めて、ようやくやり切ることができた。美容院を探して予約するというめんどくさい作業をこなし、気まずくなったかもしれなかった時間を楽しむことができた。ちょっと自信になった。まあただただ伸ばすだけだから簡単なものなのだけど、目標を達成できてよかった。目標を達成するなんてなんだか久しぶりだった。

 

 髪を切ってどうしてだか体調を崩した。季節の変わり目というのもあって2日ほど寝込んでしまった。体がだるくてお風呂に入るのが面倒だったけれど、シャンプーもドライヤーも楽になっていた。少し寂しい気もした。

 

 

 

 

ヘアドネーションするにあたって参考にしたブログ記事: 

mitsuyahideto.com

 

Japan Hair Donation & Charity JHDC/ジャーダック)のサイト:

www.jhdac.org

 

 

【今日の音楽】

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