シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいました。関西、箱根を経て、今は北ドイツで働いています。B2レベルのドイツ語に達するのが目標です

#214 Taiwo と Kehinde の話。ヨルバの双子は、生まれた時から名前が決まっているらしい

 植物マーケットの前の金曜日。語学学校は午前と午後にも授業があった。午前は代理の先生が来て授業をやった。その先生は祖父母がリトアニア人で、戦争後にカリーニングラード(ドイツ語はケーニヒスベルク)がソ連領になったためにハンブルクに越してきたらしい。教室には一人ロシアから来ている生徒Mがいて、彼と先生は社会の話をするのが好きみたいだった。授業の終盤で、戦争の話や、抗議活動の話になった。ちょうどパリで年金改革に抗議するデモがニュースになっていて「フランス人は偉い。私たちドイツ人はあまり抗議をしないよね」というようなことを先生が言った。
 私の感覚からすると、ドイツもロシアも、人々が問題意識を持って行動しているだけ偉いと思う。私がフランクフルトに着いて5日目に、鉄道がストライキを起こして、交通機関は全部ストップした。

 2023年のロシアではもう表立って抗議活動はできない。けれど、2022年の2月には街に出て抗議する人がいた。レニングラード包囲線のおばあさんがプラカードを掲げて捕まるのも、何も書かれていない紙を掲げただけで捕まった人の動画も、あの頃はたくさんの動画を見た。しんどかった。今も戦争は続いていて、私はもう動画は見れないけれど、今日もどこかで死ななくてもよかった誰かが死んでいる。昨日も。
 Mは2014年のクリミア併合の時に政府に抗議した人の話をした。逮捕されてひどい暴力を受けた人たち。2020年のベラルーシで当局がデモ参加者に対して酷いことをしたのは知っていたけれど、2014年のことは知らなかった。すごい悲しかった。警察がそんなことをやるなんて一体どういうことなんだろう。

 昼休みが終わって教室に帰ったら、ロシア人のMが今度はイスラエル人と宗教と民族の話をしていた。教室にいる5、6人がそれぞれ何かをしながら一応その会話に参加している。
「やめてくれー」と思いながら私も一応聞く。民族と学校の話をしているみたいだった。イスラエルでは宗教によって通う学校が違っているらしい。
「そんなのロシアではあり得ないよ」ってMが言う。「アルメニア人もアゼルバイジャン人も同じ学校に通ってる」
 
 私の中にも色々思うところがある。アルメニアアゼルバイジャンが争っているのはコーカサスのナゴルノとカラバフであってロシア国内の土地じゃない。でもイスラエル国内のユダヤ人とパレスチナ人はイスラエルの土地を争っているのだから、その環境は全く違う。それから、アルメニアアゼルバイジャンも同じソ連だった。ソ連時代は一応民族による差別はなかったから、その歴史があるからアルメニア人もアゼルバイジャン人もロシアで共存できるのだと思う。

どこかの駅
 でも今日は午前も午後も授業がある。休憩時間くらいゆっくりしたい。
 宗教と戦争と政治というセンシティブなテーマに、同じように疲れていたらしいタイウォがペットボトルから水を飲んで割と大きな声で私に訊く。
「日本語ってどんなんなん? 挨拶ってどんなん?」
 唐突だなあとは思いながら、この数十分の会話に疲れていたので、前のホワイトボードを使って日本語の話をしようと思う。
「日本語には3つの文字があってね、カタカナとひらがなはアルファベットっと同じで表音文字。でも漢字は違う。一つの漢字にもいくつかの読み方と意味があったりする」
みんな色々訊いてくるし、それに答えるのは結構楽しい。

市役所。観光客がたくさんいる
「アルファベットはいくつあるの?」
「ひらがなとカタカナは50。高校卒業までに習う漢字は大体2000くらいだけど、漢字自体はたくさんある」
「俺の名前、日本語で書ける?」
頑張って書いてみる。
 ロシア人のMはやっぱり物知りで、組み合わせによって漢字の意味と読み方が違うことを知っていた。あっという間にホワイトボードには余白がなくなっていく。みんなが自分の言葉や文化に興味を持ってくれるのは嬉しいことだと思う。幸せなことでもある。

これは住民登録をした時の写真
 またタイウォがよくわからないことを訊いてくる。
「双子につけられる決まった名前とかってある?」
タイウォは時々文化の違いを踏まえずに話をしてくるから困る。その時も私は「どういう意味?」って思って詳しく話を聞いた。ヨルバの文化では、双子につける名前は決まっているそうだ。
「双子のうちで先に生まれた子供はタイウォ、後に生まれた子供はケヒンディと呼ばれるらしい」
自分の耳が信じられなくて何回も聞いた。でも、やっぱり双子につけられる決まった名前というのがヨルバにはあるらしい。双子が生まれたら必ずタイウォとケヒンディと名付けられる。性別に関係なく。
「家族の名前に同じ漢字を使ったり、同じ音を入れたりすることはあるけれど、双子につけられる名前なんてないなあ」と私は言い、文化による規範に従って自由に名前を自由につけられないのは大変だろうとも思った。
 私たちは願いを込めたり、家族の名前から文字を取ったりして好きな名前を子供につけるけれど、ヨルバの名前は自分の出自を表すためのものなのだろう。「名前」に対する考え方が全く違っていてとても面白い。文化にとってはタトゥーがアイデンティティになっている。確かマオリの文化がそうだったと思う。模様を見るだけで、一族のことや家族のことがわかるのだと聞いたことがある。スコットランドのキルトもそうだったはず。そういう文化は世界のあちこちにあって、時々、今日みたいにそれが交差する。それってすごい面白いことだ。どんどん私の世界が広がっていく。

散歩中によく森に入る
 
 帰りの電車でトシンが訊いてくる。
「昼のタイウォの話わかった?」
「完璧にはわからなかったけれど、一応わかった。最後のヨルバのジョークはわからなかったけど」
「OK、Google翻訳でちゃんと説明するわ」
そう言ってトシンは英語を打ち込んでいく。綺麗な英語。差し出された画面にはこう書いてある。
「先に世界を見るのがタイウォで、ケヒンディは後から世界を見ます。タイウォに世界を見るように促して、戻って世界のことを伝えるように言うのがケヒンディなので、人々はしばしばタイウォよるケヒンディの方が年上じゃないかとふざけて言います」
もちろん法律的にはタイウォが兄または姉として登録されるらしい。

 
 
【Aufsatz003】
„Deiser Aufsatz wurde von mir in Jahr 2022“
Ich arbeite als Hotelfachmann in Hakone. Mein Hotel heißt „Hakone T-S“. Ich arbeitet 50 Stunden pro Woche, normalerweise von Dienstag bis Sonntag. Hakone ist eine kleine Stadt und ein touristische Ort. In 2.5 Stunden ist man in Tokyo. Viele Touristen besuchen Hakone.
 
【今日の音楽】
 
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