シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいる者です

#110 めちゃくちゃな一週間 中編

 ジャンパーをクローゼットから出した。おしゃれな24歳が羽織る上着は「コート」なのだろうけれど、私が着るのは「ジャンパー」である。そう。まごうことなきジャンパー。

 ポケットに手を入れると、去年のレシートが出て来た。チョコレートと映画館のレシート。しばらく考えた後で私はポケットから出て来たそのレシート達をゴミ箱に捨てた。めちゃくちゃな一週間だった。

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 日曜日は寝ていた。やらないといけない課題はあるのだけれど最近肌が痒くて痒くてたまらない。全てのことに集中できないから一日中寝ていた。受験の時も大変だった「大人になれば治るよ」って多くの人が言ってたけれど、未だに痒い。そして醜い。肌を気にするあまり小学生の頃は半袖のシャツを着れなかった。肌の汚さを見られると嫌われると考えていた。プールの授業をいつまでも好きになれなかった。毎日ジーンズをロールアップして履いていた。

 夜遅くに家を出て京都に着いた。木屋町にはたくさんの客引きがいて鬱陶しかった。「お兄さんキャバクラどうですか?」だって。私はお兄さんでもないし、お金をもってないし、お金を払ってよいしょしてもらうなんて気持ちが悪くてできない。仕方ないけれど無視をすることにした。

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 昔は高瀬川沿いに立誠小学校だった建物があって、その中に映画館があった。『さよならも出来ない』という素敵な映画を観たのがその映画館だった。私は俳優ワークショップのプログラムとして作られたその映画がひどく気に行って、一時期本気で俳優ワークショップに参加しようと思っていた。大学を休学しようとしていた時で、映画を作りたいと思っていた時期だった。結局映画を作ることも俳優のトレーニングを受けることもしていないけれど、それでも木屋町を歩く時、映画鑑賞後の感動や当時の悶々とした感情を時々思い出す。立誠小学校の跡地には今はホテルが立っていた。

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 川沿いを歩いて三条まで行き、バーに入った。パブ、ハイベリー。今夜は1:30からアーセナルの試合があるのだ。パブに入るのはいつも緊張するけれど、今日はそれほど緊張しなかった。アーセナルの一つ前の試合が、まだ行われていてニューカッスルサポーターの男の人が一人でテレビの前にいた。ニューカッスルFCのホーム、セントジェームズパークで行われたエバートン戦は2-1でもうロスタイムだった。前節終了時に首位だったエバートンニューカッスルが勝てそうなので男の人は固唾をのんでテレビを見ていた。私もリュックサックを置いてその試合を観た。間もなく笛が鳴ってニューカッスルが勝った。嬉しそうな男の人と少し話した。私はその昔2011/12シーズンのニューカッスルユナイテッドが大好きで応援していた。シュートブロックが多いチームで、センターバックにいたのはスティーブン・テーラーコロッチーニだったけれど、とにかくずっとスライディングをしていた印象である。ゴールマウスを守るのはティム・クルルで、毎試合ワクワクするようなセービングを披露していた。ライアン・テーラーコーナーキックを蹴って、キャバイエがフリーキックを決めていた。前線にはデンバ・バパピス・シセセネガル人コンビがめちゃくちゃ点を獲っていた。私のお気に入りはベン・アルファとダニー・シンプソンだった。左足のテクニックだけを武器に進んでいくベン・アルファのドリブルは観ていて楽しかった。現在はボルドーにいるみたいだけれど、エキセントリックな性格とファンタジスタを必要としない潮流のために期待されていた才能を大成できずにキャリアを終えそうである。シンプソンはその後レスターシティの一員として奇跡の優勝を成し遂げ、岡崎と共に退団した。それからシェイク・ティオテアーセナルニューカッスル戦で4点差を追いつかれた時、最後のゴールは彼のボレーシュートだった。彼の魂よ安らかに。

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 キックオフの時刻が迫るにつれてアーセナルファンが段々増えてきた。私は早くから近くに座っていた男の子と話した。Mと名乗った彼は大学1年生で、私よりも5歳も年下だった。彼と一緒に最近のアーセナルや、アーセナルの所属するイングランドプレミアリーグの話題を話した。チームから干されてるエジルはこれからどうなるんだろうとか、新加入のパーティはどんな活躍をするだろうとか同好の士ならではの会話。とても楽しかった。その中でアーセナルを好きになるきっかけをお互いに話したのだけれどさすがに5年のギャップは大きくて、なんだかおじいさんになってしまった気分だった。当の試合結果はというとマンチェスターユナイテッドのホームに乗り込んだアーセナル1-0で勝った。PKによる得点だけだったけれど点差以上にアーセナルが優位に試合を進めていて、ロブ・ホールディングが試合後のインタビューで語っていたように、別の日なら4-0で勝っていたかもしれない。大好きなエルネニーがファーストチョイスになっていてピッチ上を走り回っていたのがよかった。守備的ミッドフィルダーの彼の持ち味はセイフティなパス捌きで、悪意あるファンからは横パスしかしないと揶揄されることが多い。でも今日の彼は自信満々でどんどん前にボールを進めていた。アーセナルの最初の決定機はベジェリンのクロスだったけれど、彼がウィリアンに出したパスから生まれたものだった。前半の最後に、パスを予想してなかったであろうラッシュフォードとポグバの間を通してベジェリンに出したパスなどため息が出てしまった。

 クランベリージュースを飲んで、フィッシュアンドチップスを食べて、けっこうお金を使ってしまった。フィッシュアンドチップスを食べながら昔イギリスで食べたことを思い出した。英語を勉強しながら週末になるとパブでサッカーばかり見ていた。みんな元気にしているだろうか。最近そんなことばかり考えている。みんなに会いたい。

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トルコ人がやってる店で。450円くらいの昼ごはん

 試合が終わると河原町マクドナルドでM君と二人で始発を待った。せっかく大学に入れたのに人と会うことができないから大学生らしい生活ができていないみたいだった。今日も昼にサークルの集まりがあったけれど、大人数のサークルだからまだあまり仲良くなれていないのだという。自分が大学生になった時のことを思い出したりして感慨深く思った。何人かの友達が卒業して、もうすぐ卒業する友達もいる。コロナだからと言って実家に帰った人もいるし、そもそも人を誘って遊びに行くのが難しくなってしまったというのもある。いや前から人を誘うのには勇気が必要だったか。

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誰もいない河原町駅

 始発の阪急に乗って動き始める街を窓から見ていた。こんなに早いのに梅田駅にはたくさんの人がいた。午後には起きてzoomで授業を受けるつもりだったのだけれど起きたらもう夜になっていた。時計を見て驚いたなにしろ12時間もぶっ続けで寝ていたのだから。時間を無駄にした気分だった。色々文章を書いたり本を読もうと思ったけれどまだ眠り足りない気がして困った。オードリーのラジオをradikoで聴いたりして勉強してみたけれど集中できずに、無為に時間をつぶしてしまった。明日は文化の日でこれまた休みである。映画を観に行こうなどと思った。でも結局火曜日も寝て過ごしてしまった。昔滞在したイングランドの街と語学学校の夢を見た。

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Eastbourne

 

 

【今日の音楽】

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