日本代表のワールドカップ出場が怪しいらしい。3試合を終えて勝ち点がたったの3点。オマーンとサウジアラビアに負けて、中国には勝ったらしい。アジアを代表してワールドカップに出れるのは4カ国だけ。アジア最終予選のグループBで現状3位の日本は出場が厳しい状況だ。3位になっても望みがなくなるわけではないが、その場合ワールドカップグループに出るには、A組の3位に勝ち、さらには大陸間プレーオフでも勝たなくてはならない。ちなみに2018年ワールドカップにはアジアから5カ国出場したのだけれど、それはオーストラリアが大陸間プレーオフで北中米のホンジュラスに勝ったからである。
日本代表の試合には我がアーセナルの冨安が出ていていい感じにプレーしていた。右足も左足も同じように使える彼は最終ラインならどこでもできるから、監督としても使いやすい選手だろうと思って見ていた。アーセナルやボローニャでは右サイドバックや右センターバックで出ることが多いけれど、今日は吉田麻也と並んで左のセンターバックで出ている。冨安が好調な反面、吉田麻也がミスを連発していた。オリンピックでも活躍してクラブでも試合に出ているので、少し休んでもいいと思う。中山や板倉がいるから大丈夫のはずだ。柴崎に代わって田中碧が先発出場していた。攻撃も守備もできて、しかもよく走る選手なので見ていて頼もしい。顔もかっこよくて、高校の先輩と似ているので余計に応援してる。今はドイツ2部のデュッセルドルフにいるけれど、すぐにもっと強いチームに行くと思う。今日も初めてのスタメンなのに開始早々に点を決めていた。
後半に相手にフリーキックを決められて、残り時間はわずか。でも今日は勝たないといけない、なんていう苦しい展開だったのだけれど、途中出場から快速を飛ばしていた浅野拓磨がシュートを打ち、それが結局オウンゴールになった。85分のオウンゴールが結局決勝点になって日本代表はなんとか勝った。当分、勝たないといけない試合が続くけれどなんとかワールドカップに出てほしいなと思う。
浅野拓磨も元アーセナルの選手である。セルビアのパルチザン(サッカーチームの名前)でのすったもんだの後、夏に昇格したばかりのドイツのボーフムに加入している。ルール地方にあるボーフムはデュッセルドルフとそう離れていない場所にあるので、クラブの外で田中碧との交流があったりするのかもしれない。ボーフムは1部に上がったと思うとすぐに降格するという典型的なエレベータークラブ——英語風に言えばヨーヨークラブ——で、今シーズンもすでに18チーム中17位である。7試合で16失点して4点しか取れていない。ウイングもフォワードもできる浅野が得点を重ねたら残留できるかもしれない。
同じテーブル——順位表のことをテーブルと言ったりする——の7位には浅野の元所属チームであるシュツットガルトがいる。浅野はアーセナルで試合には出ることはなかったけれど、その間ドイツにレンタルに出されていた。16年から18年にかけて2シーズンはシュツットガルトで、18/19シーズンはハノーファーで試合に出ていた。ちなみにブンデス2部——ドイツ語風に言えばツヴァイテ・ブンデスリーガ——では13位がハノーファーで、12位がデュッセルドルフである。
みたいなことをトランスファーマーケットというサイトで調べていたら、元イングランド代表のスターリッジがオーストラリアのパース・グローリーというチームに加入しているのが目に入った。好きな選手なので、彼が2年ぶりにサッカー選手として所属チームを見つけられたのはうれしく思った。怪我さえなければなあ、なんて嘆きながら語られる選手はサッカーに限らずたくさんいるけれど、彼もその一人だ。18/19シーズン、チェルシー相手に終了間際に決めた同点ゴールはなかなか忘れられないような美しいゴールである。スターリッジは英語ではSturridgeと書くのだけど、未だに発音がわからない。
トランスファーマーケットの「latest transfers」の欄には最近チームを移った選手の名前がいろいろあるのだけれど、時々名前だけ知っているような選手が出てくる。スターリッジのすぐ上にダン・クロウリーという名前があった。無名の選手だけれど、彼はアーセナルユース出身の選手で、トップチームに昇格できずにクラブを去った1人だ。期待されて、でもうまく育たずに放出される、そんな選手は何人もいるけれど、そういう選手がやめずに活躍しているのを見るのはうれしい。サッカーを観始めた時は、トッププレイヤーのドリブルだとかシュートだとか、そういうのに感動していたけれど、年を取ると、選手がどういうキャリアを辿るのかという方が、面白いと感じるようになってきた。
そうこうしているうちに時間が来て、UEFA.TVでヨーロッパワールドカップ予選、カザフスタンとフィンランドの試合が始まった。フィンランドのサッカーは頭がいいプレーが多くて見ていて楽しい。初出場だったEUROでも、弱小なりに賢い試合運びをしていて、いいところまでいきそうだった。今日の対戦相手のカザフスタンはFIFAランキングが124位で、56位のフィンランドとはチーム力に差があった。ディフェンスラインを中心に若手が多く出ていた。怪我で出ていないウロネンに代わって左サイドバックには、応援しているハマライネンが入っていた。彼はフィンランド代表だけれどアメリカで育った選手だ。カザフスタンは背番号11番の選手が良かったけれど、なかなかシュートまではいけなかった。フィンランドは中盤のカマラとロビンロッドが自由に動きながらボールを支配していた。グレン・カマラも元アーセナルの選手。確かシエラレオネにもルーツがあると思う。レンジャーズの彼は、先シーズン、ヨーロッパリーグでも活躍していた。前半の終わりにフィンランドのフォワード、プッキがきれいなターンからゴールを奪った。アナウンサーが言うには、フィンランドのレジェンド、ヤリ・リトマネンに並んでフィンランド代表として歴代最多得点者となったという。プッキは後半開始早々にも点を決めて記録を更新した。彼の前にはもう誰もいない。全員が後ろにいるのはどんな気分なのだろう。現在プレミアリーグのノリッジにいるプッキだけど、10年前にはシャルケで内田篤人の同僚だった。シャルケにいた時の試合をテレビで見たことがあるけれど、その時はもっとテクニカルな選手で髪の毛もサラサラだった。そんな彼が今も試合の流れを読みながら頭のいいフォワードとしてプレーしていて、なんだか過ぎた年月を感じる。
オリンピック以降、私は自分がスポーツを応援する意味について考えているけれど、答えは出そうにない。つい先日、サウジアラビアの王子がニューカッスル・ユナイテッドのオーナーになって、ますますモヤモヤしてしまった。人権問題を抱えた国の王子が、人権問題を解決しようという姿勢を見せないまま、フットボールチームを所有するというのは気に食わないし、何よりスポーツウォッシュである。スポーツによって自らの人気を上げて、人権問題を覆い隠そうとしている。「オリンピックで高揚した国民は、メダルラッシュの中で政治に対して文句は言わないだろう」とでも言いたげだった政治家と同じ態度である。これからの世界でスポーツの政治利用は避けられないのかもしれないとも思う。昔見ていたようにサッカーを見られる日はもう来ないかもしれないと思うと悲しい。プレミアリーグも10年前とはだいぶ変わってしまった。10年後のサッカーはどうなっているだろう。
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