シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいました。関西、箱根を経て、今は北ドイツで働いています。B2レベルのドイツ語に達するのが目標です

2019-01-01から1年間の記事一覧

#46 障害について思うこと

目下のところEさんの頭の中には肉のことだけ。リビングで食事をする他の人のお皿から肉片をかっさらおうと機会をうかがっているのだ。「もうご飯も食べてココアも飲んだでしょう? お風呂にも入ったんだからお部屋でゆっくりしてください」と言って制止する…

#45 死人にくちなし

11月14日の夜勤。前々から読みたいと思っていた本を読み切った。読むと夢中で、ほとんど一晩で読んだ。 高野悦子『ニ十歳の原点』。おばあちゃんからもらった本。亡くなる数か月前のある日、おばあちゃんは本棚の中身を捨てる本と捨てない本に分けていた。ご…

#44 「せつない」のありか

『せつない話』という本を読んだ。私の好きな作家、山田詠美が集めた「せつない」短編たちを光文社が1993年に出版したものだ。国内外の作家が書いた14の短編たち。私はそれを先々週の金曜日に天神橋筋商店街で買ってついこないだ読みおわった。吉行淳之介の…

#43 イヤホン

イヤホンをしていた。イヤホンをしてマクドナルドの奥の暗い場所で旅行中の出来事を思い出してはつらつらとスクラップブックに書きこんでいた。とうに冷めたコーヒーと無造作に置かれたハンバーガーの包み紙が乗ったトレイは終演後の舞台のように見えなくも…

#42 目立つやつ云々

去年の1月末、免許合宿に行った。地元の車校に通うより安いようだし、私は短期集中型だから合宿で免許を取る方が性に合っている。旅が好きな私は知らない街で数週間過ごすことにも惹かれた。選んだのは山形県の小さな町でラーメンがおいしかった。 毎日ホテ…

#41 不確実性の時代におけるデートについて

もしあなたが優しい人だと思われたいのであれば、集合場所はビッグイシューの販売員がいる駅にするべきだ。相手が来た時を見計らってビッグイシューの最新号を手に取りきっかり350円を渡すのだ。お釣りをないようにするのが親切と言える。改札を出たばかりの…

#40 匂い、時々おなら

友達に貸した本が帰ってきた。ページをめくるとかすかにその人の匂いがしてちょっとだけドキドキした。私には見当もつかない香りである。多分シャンプーとかヘアスプレーとかそういう匂いなのだと思う。あるいは部屋に置いてるアロマの香りとかそんなのかも…

#39 新年。映画と小説と音楽と

2019年の新年を赤の広場で迎えた、と自慢したくて街に繰り出したのだけど赤の広場には入場規制で入れなかった。警察が柵を作った前で動けなくなって、そのまま一時間待って、別にカウントダウンをみんなでするわけでもなかった。ただスマホが新年が来たこと…

#38 29+1

中国南方航空モスクワ発武漢行きCZ356便。長いフライトで10時間ぐらい座席に座っていた。お尻が蒸れてもう少しで餃子になるかと思った。ディスプレイがあったから映画を観た。悩んだ末 『29+1』(邦題:『29歳問題』)という映画を選んだ。舞台は2005年3月…