シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいました。関西、箱根を経て、今は北ドイツで働いています。B2レベルのドイツ語に達するのが目標です

#14 台北101じゃないところ

f:id:shige_taro:20180503185858j:image

 なにもやることがなかった。

 本来なら今日は自転車で遠出しようとしていた。台北はレンタルバイクの拠点がたくさんあって、道路も比較的整備されていて自転車で走れるようになっている。だから今日は、自転車で淡水という川沿いを走ろうと思っていた。しかし天気予報はあいにくの雨である。弱った。

 とりあえず宿の近くの南陽街で朝ごはんを食べる。予備校や専門学校が所せましと並んでいる場所である。学生が多いからうまいものが比較的安く食べられるのだ。ごはん、あんかけで甘く味付けした豚肉、揚げ豆腐(に似たもの)、茎ワカメ、玉ねぎの卵とじ。それだけあって65元だった。日本円に直すとだいたい250円ぐらい。安いと思う。お代わり自由のお味噌汁(に似たもの)があった。日本の味噌汁よりも甘い気がした。

f:id:shige_taro:20180503185911j:image

 食べ終わってまた少し歩くとすぐに台北の駅前に出てしまった。まだ雨は降っていないけれどもう風が冷たい。空もどんどん暗くなってくる。もうすぐ降りだすに違いない。うーむどうしよう。ノープランである。

 

 と、その時一台のバスがやってきてバス停にとまった。ひらめいた私はそれに乗ることにした。299番のバスだった。このバスに乗って気の向いた場所で下りてみよう。

 

 バスは東へと走っていった。なんとなく予想はしていたけど、運転は荒くて、常に手すりにつかまっていないといけないほどだった。次のバス停で席が空いて、私は座ることにした。席にはシートベルトがあった。誰も使っていなかったけれど。

 日本と同じように若者はイヤホンをしてスマホを触っていた。おばあさんたちは大声でしゃべっていた。やはり電光掲示板があって、そこに次のバス停が表示される仕組みになっている。「感染症に備えて手洗いうがいをしましょう!」というような注意喚起も表示される。漢字だからなんとなくわかる。

 

 気が向いたところで私はボタンを押した。バスを下りて、グーグルマップのアプリで現在地を確かめる。インターネットが使えなくとも、スマホにはGPS機能があるのだ。21世紀に生きる私は無敵である。

 どうやらこの近くに台北101という大きなタワーがあるみたいだ。台北市の市庁舎があって、その近くはいくつかのモールがあった。再開発があった地区に思えた。少し不自然な景観だった。新たなモールも建設中であるようだった。旅行書に紹介されてあるようなおしゃれなカフェに入ってスイーツを楽しもうかと思ったけど、気が向かなかった。観光客が多くて、しかもゴールデンウイークの最中だから日本人が多くて、外国に来た気がしない。台北でモールに行くぐらいなら、イオンモールとかQ'sモールに行けばいいや。われらが西宮にも阪急西宮ガーデンズがあるではないか。帰ったらいくらでも行ける。

 

 ローカルな料理屋に入ってご飯を食べて店員さんとか、お客さんとしゃべるのが好きなのだ。地元の話を教えてもらったり、地元の人からみた私の街や、私の国についての意見を聞くのが好きなのだ。

 

 それに、床がピカピカのタイルになっていたり、ガラス張りになっていたりすると、おしゃれな雰囲気に気後れして入るのがためらわれることがある。自分みたいなダサいやつが入っていいのだろうか? 入ったが最後、何か買わなくてはいけないのではないだろうか? ———なんてへんなことを考えてしまう。わざわざ台湾に来てまでそんなこと考えたくない。

 

 結局台北101周辺は素通りした。素通りして呉興街市場という場所に行った。日本で言うところの商店街なのだけれど、野菜や魚、服や帽子が売られている。大声でセールストークを叫んでいる。地元の人が売る食材を地元の人が買っている。

 地図をみながらこれからどうしようか考えていると、道に迷っていると思われたみたいである。子供服を売る家族が話しかけてきた。地図を指さして現在地を教えてくれた。そして聞いてもいないのに駅の方面を指さしていた。全部中国語だから、想像力を駆使してなんとなく理解した。もしかしたら間違っているかもしれない。優しい人々だった。

 教えてもらった駅には用事がないので、夜に夜市がやっている臨江街というところを通った。さっきの呉興街市場と同じように物が売られていて、昼間でも活気があった。ちょうちんがずらりと並んでいた。古着が50元で売られていて、丈の長いシャツを買った。色が少し褪せていたけど、きれいなボタニカル柄だった。母にあげよう。

 帽子も買った。KENZOのキャップだけど、明らかにパチモンだった。100元(約400円)で買えるわけがない。なんとなくロゴも少し歪んでいる気がするし、PARISと書いた刺繍も真ん中から左にずれている。でもおしゃれだったし、ちょうど帽子が欲しい時だったから買うことにした。学校にかぶっていくのが楽しみだ。

 ぼったくりやスリの標的にされたくないので、極力日本人だとわからないような服装を心掛けている。ただ私の顔は「日本人ぽい」らしい。今日も帽子屋さんはいきなり「こんにちは」と話しかけてきた。最初はわからないふりをして英語で話す。セールスがしつこくないとわかってから、日本語を混ぜて話した。台湾は日本語が話せる人が多い。私はまだあいさつ程度の中国語しか話せない。勉強しないと。

 

 燕が地上すれすれを飛んだかとおもうと、とたんに雨が降ってきた。雨の中を歩いてようやくご飯屋さんにたどり着いた。石家割包。旅行書に載っている台湾風バーガーのお店だ。よく神戸元町の中華街で売られている「角煮バーガー」に似た食べ物である。角煮が小麦粉のもちもちとした生地に挟まれてバーガーのようになっている。店員さんはパクチーも入れてくれた。メニューを見るとこの角煮バーガーは綜合割包というらしい。一緒に福州魚丸湯というものも注文する。大体400円ぐらい。おいしかった。

 

 まだ雨が降っているのでカフェにはいった。ここでもすぐに日本人だとばれた。「若いのに一人旅すごいねー 英語上手ねー」と英語で言われる。店員さんも十分英語が上手である。彼女は6月に大阪に行くらしい。

 コーヒーを飲みながらパソコンでこの文章を書いていると、客足が途絶えて暇になった彼女が私の席にやってきた。「大阪のおいしい焼肉屋さん教えて!」と聞かれたから一緒に調べて(店内はWi-Fiが使えた)難波のお店を教えてあげた。

 MRT台北の地下鉄)信義安和駅近くのYolo's CAFÉというところである。おすすめである。

 

 だらだら文章を書いた。一昨日のままになっている日記も書いて、ようやく昨日の午後まで戻した。気づいたら雨は上がっていた。

 そんな台湾四日目だった。明日はどんな出会いがあるだろう。

 

f:id:shige_taro:20180503185940j:image