シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいました。関西、箱根を経て、今は北ドイツで働いています。B2レベルのドイツ語に達するのが目標です

#215 言えたはずのフレーズ

Berliner Tor駅
 今の会話に知っているはずの単語があったのではないか、聞き取れたはずのフレーズがあったのではないかと、私はがっかりしている。きっと使えたはずのフレーズも試せるはずの表現もあったに違いない。進研ゼミじゃないけれど「この場面知ってる! 教科書で呼んだやつだ!」というのが今じゃなかったのか。おばあさんが降りたドアの辺りを見るけれど列車はもう発車している。残念無念また来年。毎日の出会いを大事にしないといけないのに、今の私は大事にできていたか。チャンスはいつも突然来る。いつでも準備万端というわけには行かないけれど、準備はできている方がいい。
 
 新しい場所にいて新しいば言葉を学ぶ。一度獲得した言葉はここでは意味がなくて、掴んだものを手放して、新しいものを獲得するために走らないと。まだ言葉を獲得していなかった16歳以前と同じやるせなさが時々顔を出して焦る。常に言葉を上手く言葉にできないという不満を抱えていて辛い。楽になりたいけれど楽になるには勉強するしかない。

Wellingsbüttel 駅。この前ここのフリーWi-Fiを使って友達と長電話した
 ロシア語を勉強し始めた時、友達のモモエちゃん(もちろん仮名)が「赤ちゃんの時みたいで面白い」と言っていた。その友達は6年経ってペラペラになっている。自分も6年後に話せているのだろうか。というか1年後にはちゃんと話したいのだけど。
 言葉を話せないがためにずっと屈辱的な思いをしている。それを悔しいと思わないのも生存のための戦略なのだけど、それを当たり前だと思っていたら、ドイツ語は上達しない。

道に迷った後にようやく見つけた駅
 日本と比べてドイツの人は、車内で目線が合ってもニッコリしてくれて嬉しい。ナイジェリアから来たトシンは逆で、ドイツ人は初対面の人に優しくないと言っていた。その対比はとても興味深かった。肌の色も関係があるのかもしれない。外見やエスニックグループに対するイメージとかってドイツと日本じゃきっとまるっきり違うんだろうな。トシンはポスドク社会心理学者なので「ハンブルクでそれの研究をしたら?」って言った。もちろん冗談。でも大学で彼女がこれからどんな研究をするのかは結構興味がある。

Wandsbeker Chaussee 駅。好きな駅。
 ちなみに、電車を降りて行ったお婆さんは、私が隣に座るやいなやすぐに話かけてきた。私がドイツ語を話せるとか話せないとかは関係なく「話したいからあなたに話しかけるのよ!」って感じ。私が筋骨隆々で無愛想にしていたら話しかけられないと思うので、これは少し得だなと思う。私は昨日作り始めた暗唱文ノートを開いていて、それも話しかけやすかったのだと思う。電車でスマホを見ている人より、本を読んでいる人とか勉強している人の方が親近感はわく。
 私は話しかけてもらえてすごく嬉しかった。やっぱり毎日心細いから。ドイツ語がわからない。お金がない。時間もない。ずっと焦っている。一人だとくよくよ考え込んでしまう。
 
 おばあさんは私がドイツに来たばかりだとわかると、色々言ってくれた。私がノートを差し出すと少しだけ書いてくれたけれど、大事なのは話すことみたいで、あんまり多くは書いてくれなかった。私は耳で聞き取る勉強は苦手で、紙に書いて覚える方が得意だ。ペンを持ってもすぐに返してくるおばあさんを前にして少し残念に思いながら話を聞いていた。「行く場所はどこ?」「降りる駅、ちゃんとわかってる?」「この地図は何? Googleマップってこんな感じなのね!」「ああ、日本人なのね!」全部はわからないけれど、言ってることはなんとなくわかるから面白い。
 ぱーっとマシンガンのように話して、急に席を立ち「じゃあね」と言って降りて行った。ちょっとかっこよかった。

ここも地下鉄の入り口。見つけた時はワクワクした
 電車やバス、バーで取り止めもなく話しかけてくる人がいると、私は不安になる。この人はもしかしたら家で誰にも相手にされていないのではないか。誰にも自分の考えを言えずに今日一日過ごして、溜まってしまった言葉を私に投げかけるのではないか。一緒にいたのはバスの中の数分間、道端での数十秒なのに、私はその人の1日や1週間、人生までも考えてしまう。そこにはまた別の宇宙が広がっていて、時々怖くなる。それぞれ、たくさん思っているし考えているのに、それを伝えられない。感情は確かにそこにあったのに、伝えられないままどこかに消える。それってすごく悲しい。

地下鉄の入り口
 時間は有限で、伝えたいことは伝えないといけない。本当に大事なら。
 大切に思えることが私にはたくさんあって、脳の容積が追いつかない。スマホで写真を撮るだけ撮って、後から見返したりなんてもうほとんどしない。メモを書いても後から後から新しいメモが来て、大事な情報は埋もれてしまう。言えたはずのフレーズも、メモにして保管するだけじゃ意味がない。使わないといけない。新しい情報をインプットする機会がこれからの人生でどれだけあるだろう。それをアウトプットする時間がどれだけあるだろう。全部を大切にして生きたいなら、諦めるということさえも受け入れないと。
 
 
 
【Aufsatz004】
„Drinnen oder draußen?“
Ich bin gern drinnen. Natürlich ist es nicht gut den ganzen Tag drinnen zu bleiben. So manchmal gehe ich spazieren oder ins Café. Dann mag ich schreiben und lesen im Café oder im Park.
Zusammen mit anderen es ist auch schön ins Café zu gehen. Ich mag sprechen über Kulturen im Café. Zuhause mag ich es japanische Gerichte für Freunde zu kochen.
 
【今日の音楽】
 
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