シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいました。関西、箱根を経て、今は北ドイツで働いています。B2レベルのドイツ語に達するのが目標です

#175 ミスドで大学生活を振り返ろう(6)京都編

 もしこの地球上にミスタードーナツがなかったら、私の青春時代は違っていたのだろうと思います。もしミスドがなければ、きっと私は他の場所、例えばサイゼリヤコメダ珈琲なんかに行っていただろうとも思います。
 その場合、ミスドでコーヒーをおかわりする代わりに、ドリンクバーのジュースを混ぜ、豆菓子を摘んでいたのでしょう。その人生も、それはそれで楽しそうだと思うけれど、私の人生にあったのはミスドで過ごした時間でした。センスのいい有線がかかる店内と、コーヒーの匂いと黄色いトレイ、手の届きやすい価格のドーナツ。全部大好きです。
 
 
出町ショップ(ショップNo.0172)

 大好きなバンド Homecomings は京都精華大の出身。大学生になって初めて行ったライブは彼らのライブで、梅田シャングリラだった。私は何者かになりたいと強く思っている最中で、大学もつまらなくて、でも何をすればいいのかわからない時だった。音楽と映画と小説にのめり込んで、わかったような気になっていた。

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 まだ Homecomings のメンバーは京都に住んでいて、FM802 によく出ていた。ギターの福富くんは(福富さんと呼ぶべきなんだけど、私の中でFM802土井コマキさんが「福富くん」と呼ぶのが好きなので、私もここでは福富くんと書きます。嫌な気分をする人がいたらごめんなさい)河原町オーパの9階にあるタワレコで働いていた。私は行ったことがないけれど、福富くんはラジオでそう話していた。一度十三のファンダンゴで話しかけられたことがあって、その時はドギマギしてしまってうまく話せなかった。次会う時はちゃんと話したいと思っていたけれど、最近はライブにもイベントにも行けてない。Twitter やラジオのトークでバンドのメンバーがおすすめするカレー屋をチェックしたり、歌詞に出てくる映画を観たりしていた。

homecomings.jp

『愛がなんだ』で Homecomings が主題歌を担当したときは嬉しかった。友達とテアトル梅田まで観に行った。ヒットしている映画の主題歌を、好きなバンドが担当するなんてそうそうないことだ。今泉力哉監督は2021年の『街の上で』ではラッキーオールドサンの曲を主題歌にしているし、もう少し前の『退屈な日々にさようならを』ではカネコアヤノが主題歌を歌って出演までしている。最近好きになったトリプルファイヤーも今泉監督の『サッドティー』で主題歌を担当していた。恋愛は苦手だけど、少なくとも音楽の趣味では、何かしら監督と似ている部分があるのだと思う。

出町柳駅からだと川を渡っていくことになる
 Homecomings のホームページには『愛がなんだ』の主題歌「Cakes」について福富さんが書いた文章がある。そこには出町柳ミスドで歌詞を書いたエピソードがある。
 2021年4月、京都に住む友達を訪ねた時、ここで彼と待ち合わせた。もうホムカミは東京に進出していて、昔みたいに英語だけで歌詞を書くこともなくなった。でもその日、私は友達と出町のミスタードーナツで食べて、近くの映画館で映画を観た。
 
 
丹波の里ショップ

丹波の里やまがた屋は2020年にコロナ禍の影響で閉店してしまった

季節限定のドーナツたち

 2017年の年末から2018年の年始にかけて、京都の農場でアルバイトをしていた。アルバイトは楽しかった。毎朝起きて農場で働いて寝る。それだけの生活。寮があって、そこから長靴で走って3分で農場。最初の週に2回遅刻してしまい、農場長は1時間遅く出勤してもいいと言ってくれたのでそれに従った。懐かしい思い出がいくつもあって、全部は書けそうにない。水菜を洗いながらパートのおばあちゃんと話したこと。パートの人の昔話。廃棄のトマトで作ったピューレ、毎日食べていたカレー。

最寄り駅まで歩いて1時間半
 一番近いスーパーマーケットまで歩いて40分かかった。阪神電車だと2駅分である。週に2回ぐらい寮に住んでいる社員さんが私をスーパーまで車で連れてってくれた。大学生になって色々な地域に行くようになって、ようやく車がないと暮らせない地域のことがわかった。
 時々、夜にスーパーまで歩いた。暗い道を心細い思いをしながら歩いた。高速道路沿い大きな古墳があって、向こうにあるサービスエリアが明るかった。農場まで戻ると、ビニルハウス内は植物の成長を進めるための照明がついていて、戻ってこれたことを感じるのだった。

夜の道は真っ暗

毎朝こんな景色を見ていた
 休みの日は近くの大きな公園を歩いたり、山に登ったりした。「丹波の里」という道の駅にミスドがあって、よく行った。クリスマスの日にここでドーナツを食べたのを覚えている。ドーナツを食べて、ノートを書いていた。

野菜の絵を描いていた。
 
 
 
JR京都駅ビルショップ(ショップNo.1947)

駅の中のミスド
 2018年の2月。父親の家族に京都駅で会った。休学が終わる頃のある日。15時からの約束だったのに私は時間を勘違いして午前10時に京都駅についてしまった。どうしてそんな間違いをしたのか不思議だけれど、きっと気が動転していたのだと思う。仕方ないから駅の周辺を歩いた。東本願寺にも西本願寺にも行った。それでも時間が余るからラーメンも食べた。

西本願寺の大銀杏

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 それでも時間が余るから、ミスドに行った。京都駅は建物のデザインがかっこいい。北改札で降りるとSF映画にも出てきそうな世界がある。銀色の金属がたくさん。光沢のあるタイルでできた壁。ガラスの向こうには近代的な京都タワーがあって、その日は。ステレオタイプの日本を心に抱いてやってきた人は驚くかも知れない。

改札前で待ち合わせる人々
 駅構内のオープンテラスにもミスドがあった。コーヒーとドーナツを買って食べる。行き交う人を見下ろすカウンター席。私のいる場所から下の改札まで冷たい風が吹く。コーヒーのカップを両手で抱えながら今日はどんなことを聞かされるのだろうと考えていた。
 
 時間が来て、ミスドのある場所からエスカレーターで降り、改札で待った。程なく父親の姉と、その娘が来て、駅からつながっているホテルの喫茶室で紅茶を飲んだ。切れ切れにしか覚えていない。覚えているのは、父親はもう会いたくないと言っていること。退院したものの障害が残って、彼は仕事を辞めざるを得ないこと。今はどこか1人で住んでいること。バレンタインが近いからと従姉にもらった Dari K のチョコレートも父の姉の服についた大袈裟すぎるルイヴィトンのロゴも覚えている。ケーキセットにしたかどうかも覚えていない。かなりぼんやりとした記憶。高次脳機能障害という馴染みのない言葉をその日知った。

SF映画に出てきそうだなといつも思う
 京都駅のミスド近鉄の方にもあって、そっちの方がミスドっぽいのだけど、一度行っただけで特に思い出はないので今回は書かなかった。
 
 
 
阪急桂駅前ショップ(ショップNo.0497)

 これはだいぶ後で、2022年の2月。やだっちと行った。長岡天神駅で降りて桂まで歩こうっていう思いつき。でも、寒すぎた。そして眠かった。
 大学を卒業したらもう会えなくなるなあと思いながら歩いて、でも眠いから途中でバスに乗った。お昼に食べた中華料理でお腹が一杯で、バスに乗ったら寝てしまった。私は誰かといるのに良く寝てしまう。起きてから悲しくなる。話せたかも知れないことや、交わせたかも知れない何かが失われたことに思い至って、泣きそうになる。サークルの飲み会でよく寝てしまって、起きた後よく泣いていた。
 洛西バスターミナルというところで降りようと言って降りる。ニュータウンがあって、高島屋がある商業施設があった。コーヒーを飲むか迷って飲まなかった。本屋と100均と小さなゲーセンがあった。ただそれだけのニュータウン。綺麗な並木道に風だけが吹いていた。
 バスが来てまた寝てしまう。桂駅でとりあえず降りる。京都市内にいくには時間が遅過ぎて、だから駅前のミスドで食べた。その日はまだウクライナでの戦争が始まる前で、だから呑気に秋の留学までに何をしようかなあなんて計画を立てていた。

この日の写真が全くなくて少し後悔している
 
 
【今日の音楽】
 
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大根