シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいました。関西、箱根を経て、今は北ドイツで働いています。B2レベルのドイツ語に達するのが目標です

#120 固執

 

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固執

 

時間が止まったように感じられることは? 

自分だけが暗い穴を落ちていくのに、世界は私には気づかないで昨日と同じ顔で回り続ける

不公平だと思ったことは? 忘れてしまったの? あんなにも怒っていたのに

あの頃、あなたは私の側にいて、私と同じように世界に憤っていた

 

短い春と乾いた夏が過ぎて、あなたが遠くに行ってしまったことを私は知った

何通かあなたから手紙が来たけれど、何一つまともには読めなかった

途中まで書いた便箋がうず高く積み重なり、時々雪崩のように崩れて床に散らばった

私は誰に見せるわけでもない文章をノートに書き続け

ついには積み上がった紙で家を作り住むことにした

 

秋が深まるまでに紙でできた家は冷えるようになっていた

北風が壁から紙を剥がして持って行った

二度と戻らない文章を思って私は泣いた

そのうち本当に寒くなると私は11枚ノートを燃やして暖をとった

あの人の思い出が、あの日の思い出が、ひとつまたひとつ失われていく

その冬最後の寒波が去ると手元に残ったのは10枚の紙きれだけだった

 

雪解け水が小川を作り、いくつもの小川があつまって一つの大きな川になった

私は10枚の紙で船を折り水に浮かべた

海までゆくのだと思った

私にはもう戻れる場所がなくて、だから新しい場所に行かなくてはならなかった

その場所ではあなたの思い出は必要ないだろうと思った

 

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【今日の音楽】

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