シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいました。関西、箱根を経て、今は北ドイツで働いています。B2レベルのドイツ語に達するのが目標です

#107 白兎神社・鳴り石の浜

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白兎海岸

 ◎令和2825

 道の駅神話の里白うさぎという場所に車を停める。

 眠い。眠いし暑い。昨日3時間ぐらい鳥取砂丘でぼうっと海を見ていたからたぶん日焼けしたんだと思う。体がじんわり熱かった。日焼けは気持ちいけれど、体力がなくなるので一人旅なのだからほどほどにしないといけなかった。

 砂浜と砂丘があって国道9号線を挟んだ向かいに道の駅があった。兎と大国主命の像があってそこから白兎神社への参道が続いている。階段となった参道の左右には石で作られた兎が並んでいた。一羽ずつ表情やポーズが違っていて、見ていて飽きなかった。神話に出てくる因幡の白兎の話はこの白兎海岸が舞台である。ワニザメに皮を剥がされて痛がっている兎を大国主命が助け、兎が大国主命が八上姫と結ばれることを予言する話。興味深い神話だと思う。数千年前に実際にこの地域で起きた出来事に何か関係があるのだろう。私は昔から民話や神話が好きである。現代に残る民俗と比較したり、昔の人がどのように世界を認識していたかということを考えるのは楽しい。

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 神話にあやかった銘菓に「因幡の白うさぎ」という名のうさぎの形をした焼きまんじゅうがある。バター風味でとても美味しい。ぜひ山陰に行った際にはおすすめである。お土産にも喜ばれると思う。

 JR尼崎駅前に住んでいた時から幾度となくスーパーはくと東海道線を走るのを目撃してきたけれど、「はくと」は「白兎」だったのだと調べてみて今日わかった。どうしてだかずっと「白斗」だと思い込んでいた。生まれた時からずっと駅の側に住んでいる私が、最初に覚えた特急の一つがスーパーはくとである。関西の人はカニを食べに行く際、だいたいスーパーはくとに乗るイメージがある。あるいはサンライズ出雲か。残念ながらどちらにも実際に乗ったことはない。

 国道が無かった時代には砂浜が神社まで続いて綺麗だっただろうと思った。神社の境内には誰かが自らの凱旋を記念して奉納した狛犬が一対あった。「昭和十年」と書いてあったからまだ日中戦争が始まる前だけど満州国はもうできていた。大陸に赴き軍の中で出世した人が狛犬を奉納したのかもしれない。侵略を続けていた時代の「凱旋」という文字を見るのは複雑な気分だった。

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狛犬

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 拝殿のしめなわはとても大きくて美しくて、去年見た出雲大社のものと似ているように思えた。しかし詳しくないからどう似ているのかわからなかった。白兎神社は健康や縁結びにご利益があるらしいけれど、旅先でいつもするように交通安全を祈った。古事記日本書紀にも出てくる由緒正しい神社らしく、趣のある石燈籠や、菊の花が彫られた石などいろいろな発見があった。30分ほど滞在して参道をまた降りた。参詣者が願いを込めた白い石が鳥居や兎の上にたくさんおかれていた。綺麗だった。

 

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 次に休憩したのは鳴り石の浜という所だった。砂浜ではなく大きな石がコロコロしている浜である。歩くと確かにキュッキュッと足の下で音が鳴った。これが石の「鳴き声」である。車を停めて浜へ向かう道は盛りを過ぎたひまわりの群れが下を向いていて陰気な感じだったけれど、これは「はるかのひまわり絆プロジェクト」で蒔かれたひまわりらしかった。このプロジェクト自体は阪神淡路大震災がきっかけに始まった運動で、「人の尊厳」と「人との関わりの大切さ」を知る感性豊かな地域社会を醸成する事を目的としたものみたいだ。琴浦ひまわりの種は7年前に陸前高田市の滝の里仮説団地から届けられ、それ以来琴浦支援学校の生徒たちが植えているのだそうだ。鳴り石の浜プロジェクトという地域おこしのプロジェクトがあって、浜を観光資源にしたり、海を見えるカフェを運営したりしているのだけれど、ひまわりもその一部みたいだった。

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こうした歩道の整備もプロジェクトの一部なのだろう

 地域の人の思い、25年前に被災した人の思い、仮設住宅にいる人の思い。人間の思いというのは見えにくいし、言葉は不完全だから全てをカバーできない。それでもこうして誰かが植え始めたひまわりをこうして私は見ることができる。そういうのをつまらないものだとは全く思わない。願わくば2000本のひまわりが見ごろだった時にまた来たいと思う。次回カフェで海を見ながら優雅にコーヒーを飲もうとも思う。寝不足だからコーヒーを飲みたかったのだけれど、コロナで営業日を減らしているらしく今日はやっていなかった。こうした地域の観光業や飲食店は大丈夫なのだろうか。我々の政府は弱い人を守る政策をできているだろうか。

 

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水が透明で濡れた石がキラキラしている

 日本海を眺めがら海や川はいつみても良いと改めて思った。小学生の時は辛いことがあると校区内にある砂浜まで歩いていって何時間でも海を見ていた。浪人時代も淀川を眺めていた。台湾を一周した時も海沿いを歩きながらああでもないこうでもないと考えていた。

 夕方になる前に松江につきたかった。松江市内まで70キロなので渋滞も込みでざっと2時間ぐらいだろうと思った。松江ではKさんに会う予定だった。少し松江の町を散策してから仕事終わりのKさんとご飯を食べようと思っていた。しかしなにしろ今日は暑かった。暑すぎた。こうやって海から風の吹くところで座っているだけならいいけれどアスファルトが熱を持つ都会で歩き回れるだろうか。調べると今日の松江は35度を越えそうだった。松江市内のカフェを調べてまた車に乗った。 

 

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〈あとがき〉

#100、#101の続きです。リンクを下に貼っているので気になる人は読んでください

 

 

【今日の音楽】 

youtu.be

 

 

鳴り石の浜プロジェクト

nariishi.com

 

はるかのひまわり絆プロジェクト

haruka-project.jimdofree.com

 

 

 

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