シゲブログ ~避役的放浪記~

大学でロシア語を学んでいました。関西、箱根を経て、今は北ドイツで働いています。B2レベルのドイツ語に達するのが目標です

些細な事

#38 29+1

中国南方航空モスクワ発武漢行きCZ356便。長いフライトで10時間ぐらい座席に座っていた。お尻が蒸れてもう少しで餃子になるかと思った。ディスプレイがあったから映画を観た。悩んだ末 『29+1』(邦題:『29歳問題』)という映画を選んだ。舞台は2005年3月…

#37 青春ごっこ

全部青春ごっこなのよ。彼女はそう言った。小雨が降る夜で時刻は午後8時を数分過ぎていた。とうに閉まったお城の門には屋根があって、私達はそこで雨宿りをしながらお酒を飲んでいた。 漫画でもドラマでも映画でも、ありもしない「青春」を描いて売っている…

#36 私はМ-1グランプリを見た!!

スーパーマラドーナが好きである。初めて見たのは2012年のThe Manzai 。それまでも深夜の番組で見たことはあったけれどコンテストのための漫才は初めてだった。 伯父とホームセンターに行った帰りだった。記憶が正しければ、コーナンで買い物をして、二人で…

#35 偶然/必然

自転車がパンクした。ここ一か月でもう3回目である。誰かにいたずらされているのではないかと勘繰りたくなるような頻度である。はじめに後輪が2回パンクしてチューブを新しくした。大学が午前中で終わった日の午後、自力でチューブ交換をしてみたのだ。これ…

#34 ポケット今昔物語

今は昔——というか去年の6月——2つ年下の女の子が私に言った。「人ってそんな簡単には変われないんですよ」 その時、私は「そんなことはない」と返したし、今でもそう思っている。でもどうだろう。人間の根っこにある本質的な部分は案外変わらないのかもしれ…

#33 そのことば「取り扱い注意!」

使う時に気をつけないといけない言葉がある。 今年の2月17日と18日の土日に名古屋の大須に行った。「大須にじいろ映画祭」というのに参加したのだ。「にじいろ」という名の通り、セクシャルマイノリティに関する映画祭だった。 18日にメインの上映会があって…

#32 プレゼンターツィア  

今日はロシア語でプレゼンをする授業だった。4月から各々で進めてきた研究を発表するのだ。90分の授業で6人が発表した。 私は今月に入ってから論文を調べ、何冊かの本を読み、原稿を仕上げた。パワーポイントもどうにかこうにか仕上げた。しんどかった。 そ…

#28 パフパフホーンとドライアイス

小学校の友達と二人で飲んだ。成人式にLINEを交換してまた会うようになった友達である。その夜、酔った私の脳内にはたくさんの懐かしい映像が浮かんで、宇宙の果てアルコール星雲のかなたへ消えていった。 大方の自転車のベルは「チリンチリン!!」と鳴るの…

#26 ワールドカップと残り香

フランスの優勝でワールドカップは幕を閉じた。クロアチアは頑張ったけれどフランスは強かった。トリコロールを身にまとった選手たちがグラウンドを走っていく。優勝を記念したシャツが選手とスタッフに配られて、みんながおそろいになっていた。喜び方にも…

#22 台南でプール

ハライチの漫才に出てきそうなタイトルである。「プール」の「プ」を強めに発音したらそれっぽくなると思う。もしハライチっぽくならなかったら電話をしてほしい。 台北でめいちゃんに会ってそれから台南にきた。台南は飯がうまいと聞いていたけれど、環境の…

#21 ワインズバーグ発ミスド行き

今日はなんとか学校に行けた。でも明日の教科のテスト勉強はどうも終わりそうになくて、昨日から困っている。 単位を落とすわけにもいかないから、ダメもとでいいから勉強をしようと思っていた。早く終わらないかなーと思いながら2限を受けて、まったく授業…

#20 雨の日に考えたこと

タイの洞窟にサッカークラブの少年とコーチが閉じこめられているらしい。一人の誕生日を祝うために洞窟に入ったら出てこれなくなったという。一度入った洞窟から出れなくなるなんてそんなわけあるかよと思ったけれど、洞窟に入った後に大雨で水位が上がって…

#19 マッチも擦れない男なんて

化学の実験でガスバーナーを使うことになった。ガスバーナーに火をつけるにはマッチを擦らないといけなかった。「シゲ、マッチを擦って」と言われて箱からマッチ棒を出したのだけれど、どうしても勇気が出なかった。躊躇していると、女の子が「貸して」と言…

#18 なつみちゃん

靴擦れになった。ジャストサイズだと思っていたのに実際に歩いてみると案外ぶかぶかだった。靴ひもをきつく結んでもあまり効果がなかった。やはり安い靴には安い理由があるのだ。ワゴンセールとブランド名に踊らされてまた悪い買い物をしてしまった。 始めて…

#17 1974年のワールドカップ

真夜中、昔のワールドカップの試合映像が流れていた。1974年のワールドカップ西ドイツ大会決勝、オランダ対西ドイツ。粗いフィルムの映像がなんだか懐かしかった。 今とはルールが全然違っていた。キーパーはバックパスを手で触ってもよいみたいだった。…

#16 蛇口ひねれば五月病

最近涙もろい。低気圧なのだろうか。 昔の友達が「低気圧の日は体がしんどくて頭が痛くなる」と言っていた。私は気圧がわかるほど繊細な感覚を持っていないからよくわからなかった。頭痛持ちの彼女とは毎週のように顔を合わせていたのに、いつのまにか疎遠に…

#15 残りの回数

浪人の時の友達に会った。一緒に焼肉に行った。 予備校って大学に入るために勉強する場所だから、よくも悪くも、勉強の話題が多くて、勉強ができるやつが一番偉かったりする。みんな志望校になんとか入ろうと頑張るし、勉強だけをしていたらよいというある意…

#13 紅鮭漂流記

長い間母親と二人で暮らしていた。私が思うに母の悪いところは二つある。 一つ目は時々現れる突拍子もない一言である。一度、家族全員としゃべっているテーブルで「あげまん」という単語を発したことがあった。びっくりした。みんな唖然としていて、私だけが…

#12 花びら

今年の桜は早かった。3月中旬から1週間ぐらい自転車旅行をしたけれど、私が広島にいた22日にもう開花宣言があった。広島冷麺を食べながら店のテレビでそんな地元のニュースをみた。 それから1週間もたたないうちに関西の桜も満開になった。京都の高野川も…

#11 銭湯評論家となるまで

私は銭湯が大好きである。服を脱ぎ、体を洗い、人としゃべる。それだけでとてもリラックスできる。 大学の近くの銭湯にもよく行く。友達と湯船につかりながら勉強のこととか悩んでいることとか将来のこととかを話す。気の置けない友達との会話は指がふやける…

#10言葉の限界 その2

(#9のつづき) 「星の王子さま」を読んで半年たった後、私は軽いうつ状態になった。周囲にあふれるとげのある言葉が辛くて家に引きこもっていた。クラスメイトの、物事を言い切るような言い方が許せなかった。私の席の後ろで繰り広げられる悪口の連鎖に傷…

#9言葉の限界 その1

「関西クィア映画祭」というのがある。セクシャルマイノリティに関する映画を上映する映画祭で、「みんなヘンでいいじゃないか」というスタンスでやっているみたいだ。私は行かなかったが、去年の秋にも、11回目の映画祭が大阪と京都で行われた。今年もある…

#8晴れの日。

成人式は去年だった。成人式と言っても別に特別の日じゃなかった。むしろ面倒なイベントだった。朝起きてネクタイをしてスーツを着て成人式の会場に行くのだけれど、あまり楽しみではなかった。私は小学校を卒業した後は大阪の中学に行った。そしてそこで高…

#7県民アイデンティティ

目下のところ、東北地方を旅行中である。その旅行については他で書くとして、旅行中によくあるのは「どちらから来られたんですか?」という質問である。これはもう初対面で話す時の最も当たり障りのないテーマだと思う。辺鄙な場所であればあるほど、出身を…

#6私の中のあなたがムクムク

根に持ちやすい性格である。何年も前に言われた言葉をずっとおぼえていたりする。家族がふと言った言葉に未だに苦しめられたりする。 その時の状況とか会話の流れとかはほとんど思い出せないのだけれど、その一言だけは記憶の淵から簡単によみがえる。帰宅中…

#4妄想!シンギュラリティ!

大学に入ると、AIだの人工知能だの、VRだの、そういう耳慣れない単語がにわかに聞かれるようになった。そういうものにとんと興味がなかったので、初めて聞こえてくる単語とそれについて話す人の多さにびっくりした。 なるほど私の大学には工学部の学生が多か…

#3カレーの配分

私はカレーが好きである。 特にインドカレーが好きで、グルメな母とよく行く。高校の最寄り駅にもおいしいネパール料理屋さんがあったし、今通っている大学の最寄り駅にもおいしいインドカレーの店がある。そういえば予備校の近くにも二つ、おいしいカレー屋…