〈詩のコーナー〉
Blue Days
あなたはいないこのドアのむこう
あなたはいないこの夜の街にも
悲しくなんかないさびしくなんかない
七夕なんて毎年雨降り
シャワーのあとでコーラを飲んでる
テレビつけたまま暗がりの中で
帰りに買ったバニラのアイスバー
逃げ出したいのぬるま湯の日々から
夢だけ見ている月夜の窓辺に
カラスがとまる螺旋の階段
夕凪の街急に雨が降る
白くなる世界誰もいない路地
黒いアスファルトすき間に咲いた花
風のむこうの優しい思い出も
静かに消えていく全てが無に帰る
未だ鮮やかな青春の残像
とらわれている古ぼけたルールに
ラジオは流れても誰もいない空
幸せなんてつかめるはずもない
掬ってみてもあとから逃げてくの
絶え間なく続く真夏のメロディー
季節は巡る頼んでもないのに
カレンダーの絵はどこかの砂浜
握りしめている遠い日の痛み
かもめがとんだそのあとの一瞬
行くあてもない今夜は熱帯夜
オレンジの光長い夜が来る
沈んだ湯船明日を覗いている
夢ばかり見ても仕方がないのに
二度と帰れないあの夏の匂い
プールのあとの熱くなった体
体育座り灼けたマンホールも
探し求めている記憶のほとりで
電話は切れた誰も出ないままに
消えたくなるのこんな夜更けには
また繰り返してる最初の夏休み
あなたはいないこのドアのむこう
あなたはいないこの夜の街にも
悲しくなんかないさびしくなんかない
幸せなんてつかめるはずもない
掬ってみてもあとから逃げてくの
絶え間なく続く真夏のメロディー
電話は切れた誰も出ないままに
消えたくなるのこんな夜更けには
また繰り返してる最初の夏休み
〈付録『地下室の手記』〉
ドストエフスキーの中編小説です。読んでいくと、主人公と私がとても似ているように思えます。感じやすいくせに頭でっかちで理屈をこねて自らを正当化し、世界を憎みながら日々を過ごしている。少しグロテスクな主人公なのです。私はどうにかして主人公を反面教師にしないといけない。そう思います。でもそれはとても難しいです。手元にあるものは新潮社から昭和四十四年に出ている江川卓の訳の五十七刷です。
P74
第二部《ぼた雪にちなんで》1
同僚とのつき合いは、もちろん、長くはつづかないで、じきにぼくは彼らを見かぎってしまった。そして、当時のぼくの若さと無経験から、それこそ絶交でもしたように、あいさつすることもやめてしまった。もっとも、これはぼくの生涯にただの一度しかなかったことである。がいしていえば、ぼくはいつも一人だった。
まず第一、家にいるときは、ぼくはたいてい本を読んでいた。ぼくの内部に煮えくり返っているものを、外部からの感覚でまぎらわしたかったのである。ところで、外部からの感覚のなかで、ぼくの手のとどくものといえば、読書だけだった、読書は、むろん、たいへん役に立った。興奮させたり、楽しませたり、苦しめたりしてくれた。しかし、それでもときどきはおそろしく退屈になった。